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非公式経済がロシアで記録的規模に

 
モスクワっ子のマクシム・クルィロフさん(26歳)は以前、夜間にタクシー運転手のバイトをしていたが、配車アプリの「ウーバー(Uber)」や「ヤンデックス・タクシー(Yandex.taxi)」が2年前に登場してからは、フルタイムのタクシー運転手として活動している。「以前は何時間も呼ばれるのを待っていたが、今はそういった空き時間はない。次から次へと呼ばれるから、自分の地域内を一日中走り回ることができる」と話す。
 
現在は週に最大で4万ルーブル(約7万8000円)ほど稼いでいるという。法律では、個人事業主として登録し、収入から税金を納めなければならないが、今のところ、住宅ローンのためにお金を増やさねばならず、またタクシー・アプリの使用に公式な登録は必要ないことから、事業主登録を控えていると話す。
 
◆ 非公式経済とGDP

「ロシア連邦国家統計局」のデータによると、ロシアでは昨年、非公式経済部門の就業率がここ10年で最高になった(経済紙「RBC」が4月中旬にこれを伝えている)。
 
非公式経済部門の就業者として、ロシア連邦国家統計局は、法人登録されていない会社で働いている個人、つまりは自己雇用者、農家、個人事業主、またそこで雇用されている者、家族の活動または事業を手伝う者をあげている。
 2016年の非公式経済部門の就業者数は1540万人で、総就業者数の21.2%になる。非公式経済部門は2011年から成長し続けており、この間、400万人増えたという。
 
とはいえ、「ロシア経済・国家行政アカデミー」の試算によれば、影の労働市場には労働力人口の40%強にあたる3000万人ほどおり、うち2170万人が公式の本業と非公式の副業をしているか、または給与の一部が非公式だという。
 
「ロシア連邦財務省」のデータによると、国内の非公式給与は推定で12兆ルーブル(約23兆4000億円)。これはGDPの10~13%である。
 
◆ 原因と影響

ロシア経済・国家行政アカデミー金融市場・金融工学講座のセルゲイ・ヘスタノフ准教授によれば、非公式就業率の高まりの主な要因は、実質可処分所得の減少と財政圧力の強まりの組み合わせだという。「ロシアの所得税は13%だが、総合的な税負担水準が30%以上と高く、それによって非公式就業率があがる」
 
「今のところ、非公式就業率の高まりは大きな問題を引き起こしてはいないが、将来的には年金基金への負荷が強まっていく。当然ながら、良くないこと」と、ヘスタノフ准教授は話しながらも、非公式就業率の高まりが経済の観点からすれば、失業率の増加よりも良いことを説明する。
 
影の部門が拡大している原因は不況だけではないと、ロシアのお助け屋「ユードゥー・コム(YouDo.com)」の創設者アレクセイ・ギジリム氏は考える。「モバイル技術、インターネット技術、クラウド技術の発展が、経済の非公式部門の成長に寄与ししている。人々は不況で収入を維持しようと努めていて、公式な就業に必須の条件はあまり重要ではなくなっている」とギジリム氏。
 
ギジリム氏によれば、ユードゥー・コムには毎月、モスクワとサンクトペテルブルクだけでも4万人以上の求職者が登録しているという。全体では30万人ほどの課題遂行者(助っ人)がおり、今年末までには2倍になると、同社は考えている。
 
非公式部門で働く自己雇用者すべてが、影から引き出されれば、ロシア経済の原動力になるという。「労働システムの改革なしにこれを実行するのは不可能。特に、自己雇用者という、明確で、法的に権利と義務が定められている労働者の新しいカテゴリーが、つくられなければならない」とギジリム氏は説明する。
 
ソース:ロシアNOW/https://jp.rbth.com/business/2017/05/03/755104
 
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