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欧州排ガス基準「ユーロ5」によるディーゼル車のリコール、独・自動車3社が合意

  
ドイツ南部のバイエルン州内に本社を置く自動車3社は6月28日、欧州排ガス基準「ユーロ5」に対応したディーゼル車のリコールを実施することで、州政府と合意した。ユーロ5以下のディーゼル車は窒素酸化物(NOx)の排出量が多くシュツットガルトと地元ミュンヘンで走行規制が敷かれる恐れがあることから、修理によって排ガス性能を引き上げ、走行規制の回避につなげたい考えだ。
 
今回の合意を結んだメーカーは高級車のBMW、アウディおよび商用車のMAN。ユーロ5対応ディーゼル車の自主的なリコールを実施し、新たなソフトウエアをインストールすることを取り決めた。 ハードウエア(部品)には手を加えない。
 
全ドイツ自動車クラブ(ADAC)によると、排ガス浄化装置である尿素SCRシステム(ハード)を新たに取り付けると、NOxの排出量を約90%削減できるのに対し、ソフトの交換では削減幅が20~60%にとどまる。こうした事情があるにもかかわらず、尿素SCRシステムの追加取付を見送ったのはコストが大幅に高いためだ。ソフト交換の費用は1台当たり百ユーロのケタ台にとどまるが、尿素SCRシステムの追加取付ではケタが一段、上がる。
 
リコールの対象となるのはソフトの交換が可能なモデルのみで、アウディとBMWはユーロ5対応ディーゼル乗用車の少なくとも50%は対象となることを確約した。
 
メーカーは新ソフトの開発・認証取得費用を負担することを確約したものの、インストールの手間賃を誰が負担するかについては合意が成立していない。バイエルン州のイルゼ・アイグナー経済相は車両の持ち主にコスト負担が発生しないようにしたいと述べるにとどめた。今後は国レベルで解決策を模索していく意向を示しており、3社以外の自動車メーカーにもリコールを促す考えだ。
 
国レベルの合意は8月初旬に開催予定の連邦政府と自動車メーカーの会合で取り決められるもよう。
 
排ガス性能がユーロ5よりも低いディーゼル車はリコールの対象としない。同州のホルスト・ゼーホーファー首相は、税優遇措置を通してこれら車両の持ち主に環境性能が高い車両の購入を促す考えを示した。
 
リコールでソフトを交換する措置には今回の3社のほか、アウディとMANの親会社であるフォルクスワーゲン(VW)も支持の姿勢を示している。また、シュツットガルトに本社を置くダイムラーとポルシェも同様の措置を取る方向だ。輸入車業界団体VDIKの加盟企業はソフト交換の可能性を吟味しているという。
  
  
リコールはドイツ車が大半
 
自動車メーカーがリコールに前向きな姿勢を取ることには理由がある。ひとつはディーゼル車の実際のNOx排出量が台上試験に基づくメーカー公称値を大幅に上回ることが、VWの排ガス不正問題発覚後の調査で明らかになったことだ。独当局が実施した調査では台上試験と路上走行の違いを認識して台上試験でのみ排ガス浄化装置が適正に働くよう設定した違法ソフトの搭載車両は見つからなかったものの、欧州連合(EU)法の盲点を突いて台上試験に合格するようにしていた車両が計22モデルあった。そうした車両の持ち主からすればNOx排出量の多さを理由に都市部での走行を制限されることは許容できるものではない。
   
ドイツをはじめとする欧州の自動車メーカーはディーゼル車を長年にわたって「クリーンな車」として売り込んできた。二酸化炭素(CO2)排出量が少なく地球温暖化防止に貢献するためだが、健康に有害なNOxの排出量は極めて多く、「ダーティな車」というイメージがにわかに強まっている。走行規制論議と相まって需要の減少が続いていることもあり、少なくともユーロ5対応車のリコールを行わなければディーゼル車の将来は一段と暗くなる。
  
ディーゼル車の需要が減ると、中古車市場での販売価値が低下する。メーカーはリース車両で評価損を計上することになるため、その意味からもすでに販売したディーゼル車へのテコ入れが必要となっている。
  
ドイツで登録されているユーロ5対応のディーゼル車は今年1月1日現在、592万台に上った。ブランド別ではVWがダントツで多く、157万台と全体の27%を占める。2位以下もBMW、アウディ、メルセデスとドイツ車が続く(グラフ参照)。このため、リコールの大半は独メーカーが占めることになる。日本車は全般的に少なく、最も多い日産でも10万台を下回っている。
   
ソース:http://fbc.de/sc/sc40001/
 
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