台湾金融監督当局である金融監督管理委員会の最新統計によると、今年1~3月期に約9社の台湾企業が中国本土から撤退し、過去最多となった。多くの台湾企業が中国本土に進出しているが、しかし収益に占める本国送金比率は12%で、帳簿価値の5.4%にとどまる。主因は中国当局の資本流出規制だという。
この現状について、台湾外交部が外国人研究者向けに設立した「台湾奨助金(Taiwan Fellowship)」を取得した米国サウスカロライナ大学エイケン校ビジネススクールの謝田教授は以下のように分析した。
◆ 外資企業の資金を中国国内に留まらせる狙い
1970後半~80年代にかけて改革開放に転換した中国当局には、資金が必要だった。このため、当局は台湾企業や香港企業を「外資企業」として積極的に誘致した。「現在の中国経済発展には、台湾企業と香港企業が大きく貢献した。しかし、いったん中国本土に入った台湾と香港の資本は中国からでることができない」と謝教授は見ている。
謝教授は、10数年前中国本土に投資した友人の台湾人経営者に、「中国で投資した資金を回収することができたか」と聞いたことがあるという。友人は首を横に振り、答えなかった。
「実は台湾などの経営者たちは、中国当局が資金流出制限を強化しているため、資金を台湾や香港に送金ができなくなっていると知っている」「友人はその後、本土での投資を通じて儲けがあったものの、その収益をどうしても台湾へ送金できず、中国本土に再投資するしかない」と話した。
1980~90年代、数多くの台湾企業などの進出で、当時中国の資金および技術の不足が解決された。当局はその後、さらに欧米諸国との間で「手厚い」貿易協定を結び、中国経済がより大きく拡大した。この結果、中国当局にとって、現在資金問題は存在しないと教授が指摘する。
なぜ、台湾企業などの資金を中国国内に留まらせるのだろうか。謝教授は「中国当局の本質に関係がある。個人の資産を認めず、他人の財産を奪ってきた中国共産党は、もちろん台湾企業の資本を手に握りたいとの政治的な狙いがある」との認識を示した。
中国共産党は政権を奪ってから今現在まで、数々の政治運動を起こし、「暴力」と「恐怖」で国民に対して圧制を敷いてきた。
「しかし、長期的に政権を維持していくには暴力だけではダメだと当局は心得ている。そのため、中国当局は経済成長を通して、国民に当局は『偉大』だと思い込ませ、中国共産党統治の合法性を宣伝している」。
◆ 台湾企業、中国本土から東南アジアへ
謝田教授は、中国当局は長年経済指標をねつ造してきたと批判した。この偽装された経済データで作り上げられた「世界第2位の経済体」に、多くの海外企業が引き付けられた。しかし、外資企業が中国本土でビジネス展開を始めると、海外への送金を制限して、人民元を海外の本国通貨に自由に両替させないことで、資金が本国に戻ることを阻止する。
「また、当局は中国企業が外資企業の製品を模倣し、知的財産権を侵害するのを黙認し外資企業の技術を盗む。このように、当局が入手した外資企業の資金と技術を用いて、国有大手企業を扶植する」と分析した。
現在中国経済は不動産バブル、株価大暴落、元安、企業や政府の債務急増問題など多くの難題に直面しており、ねつ造された「経済の繁栄」はまもなく消える。多くの投資家が「中国リスク」を認識し、中国市場から続々と撤退している。
一部の台湾経営者の中で、中国本土と台湾の密な関係から、中国経済が崩壊すれば、台湾経済も大きな打撃を受けると危惧する。
これに対して、謝教授は「中国当局は台湾政府に対して、長年経済に台湾企業を通じて圧力をかけてきた。しかし、台湾国民と政府は今その危機感を強めている。いわゆる「南へ向かう新政策」(投資先を中国本土から東南アジアにシフトする)で、台湾政府は中国経済に依存する現状を打破しようとしている」と話した。
教授は、今すぐにはその政策の効果が目に見えないとしても、中国経済への依存を断ち、中国共産党政権からの指図を受けないために、この政策を堅持していく必要があるとの見解を示した。
(記者・陳懿勝=台湾、翻訳編集・張哲)
ソース:http://www.epochtimes.jp/2017/07/27890.html
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