2017年6月30日

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EUと英の離脱交渉、「2段階方式」で合意

EUと英の離脱交渉、「2段階方式」で合意

EUと英国は19日、英の離脱をめぐる交渉をブリュッセルのEU本部で開始した。双方は同日、交渉の進め方について合意。まず主要な離脱条件についての協議を行い、通商など将来の関係に関する話し合いは後回しとすることを決めた。英国がEUの要求を受け入れた形となる。

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EUのバルニエ首席交渉官と英政府のデービスEU離脱担当相が記者会見で明らかにしたところによると、交渉は毎月1回、1週間の日程で行う。交渉は「2段階方式」とし、まず◇英国に居住するEU市民、他のEU加盟国で暮らす英国民の権利保護◇英国が拠出を約束したEU長期予算の分担金など最大1,000億ユーロに上るとされる「清算金」の支払い◇英国の北アイルランドと国境を接する加盟国アイルランドとの国境管理問題◇その他の法的問題――の4つを優先的に協議することで一致した。
これらのうち市民の権利保護、清算金、その他の問題については、それぞれ作業部会を設け、交渉を進めていく。国境管理に関しては、EUと英国の将来の通商関係がどのようになるかによって大きく左右されるため、別枠で慎重に協議することを決めた。
 
英政府は清算金など離脱条件と、自由貿易協定(FTA)など将来の関係をめぐる協議を同時に進めることを主張していた。これに対してEU側は、英国を除く27カ国が4月末に採択した基本方針で、離脱条件の交渉を先行させ、これに「十分な進展」があったと加盟国が判断しなければ、次の段階に進まない2段階方式とすることを打ち出していた。
離脱交渉の期間は原則2年だが、英政府がEU離脱を正式通告した3月29日にカウントダウンが始まったため、現時点で残る交渉期間は1年9カ月となっている。しかも、交渉結果は欧州議会などの承認を得なければならず、その手続きに時間がかかることから、18年秋には交渉を妥結させる必要があり、実質的な交渉期間は限られる。仮に交渉が難航し、合意に達しないまま英国が19年3月に離脱した場合、双方の関係は混迷するが、経済的な影響はEUが最大の貿易相手である英国の方がはるかに大きい。さらに英政府は、先の下院選で与党・保守党が過半数を割り込み、メイ首相の求心力が大きく低下したこともあって、強い政権基盤をバックに離脱交渉に臨むという戦略に狂いが生じた。このためEUが有利な立場にあり、交渉の主導権を握る見通しだ。2段階方式で合意したのも、早く交渉を本格化させたい英国側が歩み寄った格好だ。
 
一方、英国が選挙の結果を受けて、EU単一市場残留より移民制限を優先する「ハードブレグジット(強行離脱)」路線から、単一市場にとどまる「ソフトブレグジット(穏健な離脱)」に舵を切るとの観測が浮上していたが、デービスEU離脱担当相は記者会見で方針転換を否定した。
一方、21日には英議会が開会し、エリザベス女王がメイ首相の施政方針演説を代読した。この中でメイ首相は離脱問題について「交渉で最善の合意を得ることが政府の最優先課題だ」として、「英国にとって悪い合意よりは、合意しないほうがまし」という従来の強硬な姿勢から転換。議会や経済界などと連携して「可能な限り広範な合意を形成する」と述べ、各方面の意見も聞きながら円滑なEU離脱を目指す方針を打ち出した。ただ、一般論にとどまり、離脱交渉の具体策に関する言及はなかった。
 
ソース:http://fbc.de/eur/eur4281/

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