【ドイツの評価】、西欧・北欧では高く、南欧とは意識・経済で隔たり?
欧州におけるドイツの存在感・役割に関する調査結果が最近、相次いで発表された。ひとつは同国に対する欧州連合(EU)市民の意識を示すもの、もうひとつは欧州経済で同国の貿易が果たす役割に関するものだ。両調査ともドイツの重要性を改めて示すとともに、同国と南欧諸国の溝を期せずして浮き彫りにしている。
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EU市民の意識調査は米ピュー研究所がドイツを含むEU10カ国の市民を対象に今春、実施した。それによると、ドイツを「好き」とする回答は71%に達し、「嫌い」の21%を大幅に上回った(下のグラフ1を参照)。「好き」は特に西欧・北欧諸国で高く、オランダとスウェーデンではそれぞれ93%、90%に達した。
「嫌い」は南欧諸国で高く、ギリシャでは76%に上る。同国は財政危機が長期化。財政支援の見返りにEUから要求された緊縮措置に多くの国民が苦しんでいることから、緊縮財政要求を主導する国としてドイツが恨みの的となっている。
一方、「EUの意志決定におけるドイツの影響力」に関しては「大きすぎる」が10カ国平均で49%に上り、「適度」(36%)を13ポイント上回った。金融危機で財政が悪化した南欧諸国と、加盟国間での難民の配分をめぐってドイツと対立する東欧諸国で警戒感が強い。ただ、スウェーデンとオランダでは「適度」がともに72%と高く、フランスでも過半数に上っている。(下のグラフ2を参照)
「メルケル独首相の国際政策を評価しますか」との質問では「評価する」が52%に上り、「評価しない」(45%)を7ポイント上回った(下のグラフ3を参照)。オランダとスウェーデンでは「評価する」が89%に達し、ドイツ本国の同81%を凌駕している。メルケル首相は保護主義へと向かう米トランプ政権を批判し、「自由な西側世界のリーダー」と目されており、これがプラスに働いたもようだ。ドイツを除く9カ国中6カ国でプラス評価が増えた。ただ、南欧と東欧ではマイナス評価が依然として多い。
「独の高い競争力はEUにプラス」
欧州経済でドイツの貿易が果たす役割に関する調査は独バイエルン州の経済団体VBWの委託でスイスの調査会社プログノスが実施したもので、ドイツの経常黒字が他のEU加盟国の経済を圧迫しているとの批判に反論する内容だ。
それによると、ドイツの輸入によって生み出されるEUの他の加盟国の雇用規模は480万人で、そのうち340万人は中間財と投資財の輸入によって創出されている。つまり「メード・イン・ジャーマニー」の高い競争力はEUの雇用に大きく寄与しており、ドイツ製品の競争力低下はEUの雇用と経済に悪影響をもたらす。ドイツ経済が2019年まで仮にゼロ成長にとどまると、年率1.8%の成長が続いた場合に比べて、他のEU加盟国の国内総生産(GDP)は180億ユーロ縮小するという。
ドイツ経済の高い競争力の恩恵を特に強く受けるのは、同国経済と緊密に連動している中東欧と西欧の隣接国で、チェコ、スロバキア、オランダ、オーストリアでは対独輸出がGDPの7~8%を占める。
一方、南欧諸国は製造業の基盤が弱いうえ、地理的にドイツから遠いことから、同国の高い競争力の恩恵が小さく、低成長が長期化している。
ドイツの経常黒字が世界経済にもたらす影響はプログノスの調査の対象となっていない。
ソース:http://fbc.de/sc/sc39936/
>>あわせて読みたい 『欧州委員会、EU域外で行われるユーロ建て金融取引の清算業務の監督強化』
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