フィッチ、ブラジル国債を「投機的」から変更せず
ブラジル政財界の贈収賄捜査「ラヴァ・ジャット作戦」において、ブラジル最大の食肉加工会社JBS経営陣が検察との司法取引に応じたが、その証言がブラジルの政界を再び大きく揺るがしている。
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贈収賄に関するJBS幹部の証言には、テメル大統領を含む現役の大物政治家が名を連ねている。次期大統領候補ともいわれたアエシオ・ネヴィス氏のように、捜査が進展する過程で議員資格を剥奪される政治家も出ている。
昨年のルセフ大統領弾劾から1年足らずでブラジル政界はまた混迷の様相を呈し始めたが、世界はこの状況をどう評価しているのか、その一端を示す情報が入ってきた。
グローボ系ニュースサイト「G1」が5月19日づけで伝えたところによると、格付け機関フィッチ・レーティングス(以下「フィッチ」)がブラジル国債の格付けを「BB(投機的)」に据え置いたという。
フィッチはまた、ブラジルの今後の見通しについてあまり明るくないとの見解を示した。
今回の格付け据え置きに関してフィッチは、経済の回復度合いがまだ鈍いことと、繰り返される政情不安をリスクの要因とした結果と伝えている。
「ブラジルの格付けを投機的と据え置いたのは、国の財務体質の脆弱さ、政府の借財の増加も関係しているものの、政治の不安定化に関する話題が繰り返され経済にネガティブな影響を与えている点が大きな要因といえます」(フィッチのプレスリリースより)
一方でフィッチは、ブラジルの弱点は国の経済活動の多様化、省庁組織の強化によって補強されうるとも伝えている。インフレ率の低下と公的支出の削減などが進めば格付けが変わる可能性を示唆している。
ブラジル財務相は、国家の財務体質強化と借財の適正化に向けて鋭意努めている、と述べている。
「フィッチの発表は景気の回復と持続可能な成長を実現するための基盤を整えることの重要性を改めて伝えています。改革を順々に進めていくことが重要です。それにより財務体質は強化され、借入についてもよい報告に向かうこととなります」(財務省)
一方で今後の見通しについては次のように述べている。
「フィッチが出した将来に対するネガティブな評価はブラジル経済の回復がまだ力強さに欠けること、借財が増えていること、年金制度改革のような法制度の改定が順調に進むか読みづらいことから生じているとみられます」(財務省)
フィッチはブラジルのGDP成長率について、2017年は0.5%、2018年は2.5%と見ているが、昨今の政界の動揺が社会経済改革の進捗に影響し、経済の回復が遅れる可能性を示唆している。
スタンダード・アンド・プアーズ、ムーディーズもそれぞれの見解を示している。
検察との司法取引に応じたJBSのオーナー、ジョズレイ・バチスタ氏がテメル大統領と交わした会話の録音を裁判所に提出した後、最高裁判所はテメル大統領に対する調査開始を命じた。
現地「オ・グローボ」紙は、前下院議長ですでに逮捕されているクーニャ氏が検察に証言をしないようJBSが同氏に賄賂を贈っていたと伝えている。検察に提出された録音の内容はこの贈賄についてのジョズレイ氏とテメル大統領の会話である、とジョズレイ氏が連邦警察捜査員に対して話しているという。
ブラジル国債に関するフィッチの格付けと今後の見通しについての評価は2016年5月から変わっていない。
もう一つの格付機関スタンダード・アンド・プアーズも今年2月、ブラジル国債の格付けを「投機的」から変更しなかった。やはり政情不安と経済の回復力の弱さから先の見通しが立てにくいことを理由として挙げている。
ムーディーズは今年3月にブラジル国債の格付けを1ランク上げていた。しかしながら、5月19日、テメル大統領を巻き込んだ疑惑は、ここしばらく続いていた政治的安定を覆し、ブラジルの信用力を棄損する可能性があるとのコメントを発表した。
ブラジルは2008年、2009年とフィッチおよびスタンダード・アンド・プアーズから投資適格との格付けを得ていた。2009年にはムーディーズからも投資適格との判定を受けていた。
ブラジル国債を投資適格から真っ先に外したのはスタンダード・アンド・プアーズで、2015年9月のことだった。他の2社もそれに続いた。
市場アナリストいわく、過去の記録を見る限り、一度投機的格付けに落ちた国が再度投資適格級に引き上げられるまでにかかる期間は、だいたい5年から10年とのことだ。
(文/原田 侑、写真/Marcos Corrêa/PR)
写真はテメル大統領
ソース:http://megabrasil.jp/20170523_35852/
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