シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州議選では、CDUが得票率を2012年の前回選挙から2.2ポイント増の32.0%へと拡大。SPDは3.2ポイント減の27.2%となり、大きく水をあけられた。環境政党・緑の党は0.3ポイント減の12.9%、中道右派の自由民主党(FDP)は3.3ポイント増の11.5%だった。
移民排斥政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は初参加で5.9%を獲得し、同州議会への進出を果たしたものの、昨年の州議選(他州)に比べると得票率は低く、難民問題を追い風とした急速な党勢拡大にブレーキがかかっている。3月のザールラント州議選でも6.2%にとどまった。
各党の新議席数はCDUが25、SPDが21、緑の党が10、FDPが9、AfDが5、デンマーク系住民政党の南部シュレスヴィヒ有権者連盟(SSW)が3。SSWの得票率は3.3%で、議席獲得に本来必要な同5%の最低ラインに届かなかったものの、少数民族政党であるため特別ルールで議席の配分を受ける。
総議席数は73で、過半数は37。議席を獲得した6政党のうちAfDとSSWが政権に参加することはないため、次期政権の可能性は(1)CDUと緑の党、FDPの3党からなるいわゆる「ジャマイカ政権(3党のシンボルカラー黒緑黄がジャマイカ国旗の配色と一致することにちなんだ命名)」(2)SPDと緑の党、FDPの3党からなる「信号政権(3党のシンボルカラー赤緑黄にちなんだ命名)」(3)2大政党のCDUとSPDからなる大連立政権――の3つに絞られる。第一党のCDUはジャマイカ政権を軸に連立交渉を進める意向を表明した。
不振の原因は党首にも
シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州議選でSPDが敗北した主な原因は、同党のトルステン・アルビヒ州首相が選挙の3週間前に行った不用意な発言にある。同首相は恋人とともに応じたゴシップ誌『ブンテ』のインタビューで、離婚協議中の妻との関係に言及。仕事で飛び回っている自身と専業主婦志向の強い妻との間に齟齬が生じたことが離婚の原因だと正直に語った。これが一部主婦層の反感を買い、同州でのSPDの支持率は急速に低下した。
ただ、州議選2連敗の原因の一部がマルティン・シュルツ党首にあることも否定できない。
中道左派のSPDは前欧州議会議長のシュルツ氏を同党の次期連邦首相候補に選定した1月下旬以降、支持率が全国的に急上昇した。2000年代の構造改革「アジェンダ2010」の副作用として非正規雇用が拡大したり、高齢労働者の貧困転落懸念が強まっている現状の是正方針を打ち出したためだ。
ただ、その後はこれといって新たな政策方針を表明していないことから、メディアに登場する頻度が低下。これに伴い一時は飛ぶ鳥を落とす勢いだった「シュルツ効果」が弱まっている。
シュルツ党首が打ち出した構造改革是正方針の実現には、急進左派の左翼党を含む左派連立政権の樹立が必要とみられることも勢力拡大のネックとなっている。中道支持層の間に警戒感が広がっているためだ。
こうした事情を背景に最近はメルケル首相を党首とするCDUの支持率が高まっている。危機感を持ったシュルツ党首は8日、ベルリン商工会議所での講演で、企業投資の促進方針を打ち出すとともに、左翼党に距離を置く姿勢を示した。
ソース:http://fbc.de/sc/sc39741/
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