加盟国の離脱に関するルールを定めたEU基本条約の第50条では、離脱交渉の期間は原則2年と定められている。同期間は離脱を通告した日が起点となるため、同日に時計の針が動き出したことになる。
EUのトゥスク大統領(欧州理事会常任議長)は31日、英国を除く加盟27カ国に離脱交渉の基本方針案を提示した。EUは英国を除く27カ国が4月29日に開く特別首脳会議で、同方針を決めた上で、英国との離脱交渉に入る。このため、離脱交渉の開始は5月中旬頃となる見込み。
離脱交渉でEU側の責任者となるミシェル・バルニエ氏(元仏外相)は、交渉結果は欧州議会などの承認を得なければならず、その手続きに時間がかかることから、18年10月には交渉を妥結させる必要があるとしており、実質的な交渉期間は2年を大きく下回る見通しだ。
英政府はEU離脱によって移民政策などをめぐる主権を回復しながら、EUとの緊密な関係を維持したい考え。最大の焦点とされたEU単一市場残留については、EUからの移民を引き続き受け入れることが条件となるため断念したものの、EUと包括的な自由貿易協定(FTA)を締結することで、できる限り単一市場へのアクセスを確保することを目指している。
メイ首相は離脱通告後に英議会で行った演説で、「歴史的な瞬間だ。後戻りはできない」と述べ、歴史的な離脱交渉に臨む決意を表明。一方、トゥスク大統領に提出した離脱通知では、EUと「深い、特別な関係を構築したい」として、建設的な姿勢で交渉を行う方針を示した。
ただ、EU側は英国が有利な条件で離脱すると、他の加盟国に「離脱ドミノ」が広がりかねないことから、厳しい姿勢で交渉に臨む方針。FTAなどで厳しい条件を突きつけるとみられている。これを意識してメイ首相は離脱通知で、離脱交渉が望む結果とならなければ「犯罪、テロ対策での協力が弱まる」と述べた。EUが強硬な姿勢を貫けば、英国が安全保障をめぐる協力から手を引くと脅迫した格好だ。
また、英国は離脱交渉と同時進行で、FTAなど新たな関係構築に向けた協定の交渉を進めたい方針だが、EU側は英国が約束していたEU予算などへの最大600億ユーロの拠出の支払い問題の解決が最初の課題としており、交渉が入り口で紛糾する可能性がある。トゥスク大統領は27カ国に示した交渉指針案で、まず支払い問題、英国に居住するEU市民の権利保護など主要な離脱条件について協議し、これに「十分な進展」があったと判断した時点で、FTAなどの交渉に応じる方針を示した。
仮に交渉が難航を極め、期限内に妥結しなければ、英国は新たな取り決めを結ぶことなくEU離脱を迫られる。この場合、EUとの通商には世界貿易機関(WTO)のルールが適用され、関税などの障壁に直面し、経済が大きな打撃を受けることになる。
ソース:http://fbc.de/eur/eur4042/
>>あわせて読みたい 『EU27カ国が「ローマ宣言」採択、先行統合推進を表明』