IPCC第5次評価報告書では、20世紀末頃(1986年~2005年)と比べて、有効な温暖化対策をとらなかった場合、21世紀末(2081年~2100年)の世界の平均気温は、2.6~4.8℃上昇(赤色の帯)、厳しい温暖化対策をとった場合でも0.3~1.7℃上昇(青色の帯)する可能性が高くなっている。世界では温暖化が深刻化しているのである。
その中で、昨年12月、温室効果ガス排出国世界1位の中国と、2位の米国を中心に94カ国・地域が批准し、2020年以降の地球温暖化対策として発効されたのが「パリ協定」である。パリ協定では「地球の気温上昇を産業革命前から2度未満に抑える」といった大きな目標を掲げていて、世界が協力して深刻な温暖化に歯止めをかけようとする取り組みである。
しかし、今回米トランプ大統領は、前オバマ政権時代に締結された火力発電に二酸化炭素(CO2)の排出削減を義務付けた「グリーンパワー計画」などの規制の撤廃、そして石油や天然ガス生産規制の緩和への大統領令に署名したのである。「パリ協定」による世界の流れに逆行してまでも、自国内の雇用創出を優先した。
また、トランプ氏は「地球温暖化は中国のでっち上げ」とも述べた上で、「パリ協定」からの離脱も促した。世界2位の温室効果ガス排出国の「パリ協定」離脱は、目標達成において黄信号となってしまう。
世界の流れに逆行し、自国優先する保護主義の末路は2つに別れる。1つ目は世界からの信頼低下。2つ目は圧倒的な強さの元、世界のトップに君臨すること。トランプ政権誕生の波により、欧州なのでも大衆迎合主義(ポピュリズム)が台頭し、自国優先の強さへ世界が目を向け始めていた。しかし、就任2ヶ月後も未だ不透明な政策を見せるトランプ氏への過去の期待はすでに不安になっている。それと同時に欧州でもポピュリズムが影を見せ始めている。このまま、あくまでもトランプ氏が自国優先を進め続けるのであれば、米国の元来持つリーダーシップの低下という末路になりかねない。
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