トランプ包囲網形成へ、CeBIT(国際情報通信技術見本市)で独日首相が自由貿易を擁護
国際情報通信技術見本市CeBIT(セビット)がドイツ北部のハノーバーで20日、開幕した。日本をパートナー国とした今回は安倍晋三首相が参加。製造業のデジタル化であるインダストリー4.0やあらゆる機器がネットでつながるモノのインターネット(IoT)分野で両国の協力関係を深化させることで合意した。それと同時に、米国のトランプ新政権が保護主義的な政策方針を打ち出していることを踏まえ、自由貿易を擁護していく考えをメルケル首相とともの世界に発信した。
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国際情報通信技術見本市CeBIT(セビット)がドイツ北部のハノーバーで20日、開幕した。日本をパートナー国とした今回は安倍晋三首相が参加。製造業のデジタル化であるインダストリー4.0やあらゆる機器がネットでつながるモノのインターネット(IoT)分野で両国の協力関係を深化させることで合意した。それと同時に、米国のトランプ新政権が保護主義的な政策方針を打ち出していることを踏まえ、自由貿易を擁護していく考えをメルケル首相とともの世界に発信した。
日本がCeBITの今年のパートナー国となったのは安倍首相の昨年5月の訪独に際しメルケル首相から直接、「パートナー国となりませんか」と打診を受けたため。「あなたも、是非おいでなさい」と誘いを受けたという。
日本側はこれに応え、約200社が参加。日本貿易振興機構(ジェトロ)のジャパン・パビリオンには前年の10倍以上の118社が出展している。展示面積は7,200平方メートルに達し、パートナー国ではCeBIT史上、最大となった。
同パビリオンには中小企業およそ50社が出展した。国外の見本市に初めて参加する企業も多い。
日独両国は自動車、電機、機械などを主力産業とする点や、経済に果たす中小企業の役割の重要性、モノづくりを重視する姿勢などで共通している。世耕弘成経済産業相は『ハンデルスブラット』紙に、今回のCeBITに日本企業が数多く参加したのは、ドイツとともに成長したいという熱い思いの表れだと明言。デジタル化が進展する時代に両国が手を結び、世界を主導する考えを表明した。
ドイツはインダストリー4.0に官民一体のプロジェクトとして取り組みだした当初、戦略的に重要な国として米国と中国を念頭に置いていた。米国はIT産業の総合力で他国に水をあけ、巨大な人口を抱える中国は市場としての魅力が大きいためだ。
米国とは同分野で競合する懸念があった。だが、IoTの実現に向けた経済団体である米国主導の「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム(IIC)」とドイツの「プラットフォーム・インダストリー4.0」は昨年3月に提携合意。システムの相互運用性や規格分野で協調していくことを取り決めた。
中国との間ではインダストリー4.0の規格策定に向けて作業部会を設置することで15年夏に合意した。その際、◇知財権を保護する◇技術移転を強要しない◇透明な標準策定◇企業データの保護◇企業活動の枠組み条件の改善――を取り決めたものの、機械や設備が工場や企業の枠を超えて世界的に交換するデータへのアクセスを当局に認める中国のサイバーセキュリティ法を受けて、ドイツ側が警戒。協力関係は停滞しているもようだ。
協力関係を閣僚級に格上げ
日本は米中に比べやや出遅れた感があったが、経済産業省は昨年4月に独経済省との間で、IoT分野で日独が協力することで合意(日独IoT/インダストリー4.0協力に関する共同声明)。民間レベルでも日本のロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)とドイツのプラットフォーム・インダストリー4.0が連携強化を取り決め、製造業デジタル化の推進に向けて両国が協働していく体制が整備された。
経産省と独経済省の昨年の合意は次官級の声明だった。今年は「ハノーバー宣言(第四次産業革命に関する日独共同声明)」を採択し、これを閣僚級へと格上げした。国際標準の策定や欧州連合(EU)内で大きな発言力を持つドイツとの協力関係を強化する意義は大きい。
日EU経済連携協定に意欲
今回のCeBITはIoT分野での協力という個別テーマを超えた外交上の大きな意味を持つ舞台となった。戦後の自由貿易体制を支えてきた米国の政策を自国中心の保護主義へと転換しようとしているトランプ新大統領に対し、メルケル首相が包囲網の構築に動いていることが見えてきたのだ。
同首相はCeBIT前夜祭の講演で、「我々は自由で開かれた市場を求める」と発言。「自由な通商、開かれた国境、民主的な価値について多くの者たちと争わねばならない時代に、日本とドイツが争うのでなく、人類の繁栄に向けて未来を共同で作り上げていく」ことは良い兆候だと述べ、日本とドイツ、EUの関係を緊密化していくことに意欲を示した。自動車と農産物がネックとなり停滞している日本とEUの経済連携協定(EPA)についても早急に実現を図り、通商関係を強化していく考えだ。
ドイツ政府は環太平洋経済連携協定(TPP)からの米国の離脱を欧州にとってのチャンスとみており、EUはこの機会を活用してアジアで経済的なプレゼンスを強化していくとみられる。
メルケル首相はトランプ大統領の就任後、中国の習近平国家主席と電話会談を二度行い、自由貿易堅持を確認した。中国は自国市場での外資の活動に大きな制限を加えているものの、ドイツは対米通商政策分野では手を結び、同大統領に圧力をかける考えだ。
日本はドイツ同様、製造業が経済の大きな柱となっている。安倍首相は20日の共同記者会見で、「世界で保護主義や内向き志向の台頭が懸念される中、私はアンゲラと自由で開かれた国際秩序こそが平和と繁栄の礎であるとの点について一致をいたしました。世界で保護主義の動きが大きくなっていく中で、日欧が米国とともに協力して自由貿易の旗を高く掲げ続けなければなりません」と明言。米国を自由貿易体制の枠内にとどめるよう注力する考えを示唆した。日本とEUのEPA交渉の妥結は「世界に対して発する象徴的なメッセージとなり、極めて重要」だとしている。
安倍首相と21日に会談したEUのトゥスク大統領とユンケル欧州委員長も日本とのEPA締結に強い意欲を示した。トランプ政権の誕生や英国のEU離脱など世界の内向き志向の強まりがバネとなり、同EPA交渉は前進の機運が高まってきた。
ソース:http://fbc.de/sc/sc39445/
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