中国当局は公的金保有量に関する統計データや保有量増加の目的、そして国内の金備蓄量について公表を避けている。
大紀元はこのほど、中国の金保有量について長年調査を行っている、シンガポール金取引企業BullionStarアナリストのコース・ジャンセン(Koos Jansen)氏を取材。同氏は、中国当局は2000年から国内の金採掘や海外からの金輸入や個人の金需要拡大を通じて、金保有を増やしてきたと指摘した。
◆ アナリスト「金を持つものがルールを決める」
その理由は「人民元国際化のためだ。金の保有量が多ければ多いほど、人民元は信用力の高い準備通貨になれると中国当局が考えている」と述べた。「お金の世界では、金を持つ者が通貨のルールを決める」と言われてるように、中国当局は国際通貨制度のルール制定に関して、発言権を強める狙いがあるという。
国際通貨基金(IMF)によると、米国の公的金保有量は8133トンで、国別で群を抜いて世界1位。米ドルが基軸通貨で、各国の通貨の中で信用力が最も高いのも事実だ。
このため、中国当局は人民元をドルのような強い通貨にするには、国内の金備蓄を増加する必要があった。当局は2004年から、国有大手銀行の個人向け金投資を解禁するなどの規制緩和で、金購入・金現物保有という国民の金への需要を高めてきた。
◆ 中国600カ所の金鉱山 約490トン産出
ジャンセン氏によると、2000年の中国の公的と個人を合わせた金備蓄はわずか4000トンだった。当局は保有量を増やすため、まず国内の金採掘を強化した。「現在中国の金鉱山は約600カ所だ。2015年この600カ所から約490トンの金が産出された。同年資源大国オーストラリアで産出した300トンよりも多く、産出量として世界1位となった」と述べた。
さらに、他国から金を輸入することで金保有が増加させた。ジャンセン氏の調査では、16年中国は香港市場、スイス市場そしてイギリス市場から約1300トンの金を輸入した。
ジャンセン氏は「ただ、輸入された金は中国人民銀行(中央銀行)ではなく、上海金取引所を通じて、ほとんど個人消費者や企業などに流れていった」「中国国内で生産された金、海外から輸入した金はすべて上海金取引所に集中される。同取引所から引き出される金塊総量は、個人や企業などの金需要総量にほぼ一致する」という。
中国国民と企業が金を購入する理由は、対ドルで人民元の下落というリスク回避や資産運用の多様化が挙げられる。
一方、中国人民銀行(中央銀行)も実は、密かに海外で金を買い付けているという。ジャンセン氏は中国の金融機関に勤める友人の話から、「中国の公的金保有量は約4000トンで、当局が公表した1842トンではない」と指摘した。
ジャンセン氏は長年の調査を通じて「人民銀行の金買い付け担当者らは頻繁に活動し、直接、イギリスから金を手に入れることもできた」と話す。
「例えば、イギリスのロンドン貴金属市場協会(LBMA)によると、11~15年において同協会の金保有量が2750トン減少した。そのうちの1000トンは他の国に輸出したもので、残りの1750トンがどこに流れたのかはわかっていないという。この1750トンの金が密かに中国の公的金保有となった可能性が高い」「また人民銀行は中国の商業銀行を通じて、スイスや南アフリカで金を買い付けた後に中国に送ることもよくある」と話した。
(大紀元英語電子版記者・Valentin Schmid、翻訳編集・張哲)
ソース:http://www.epochtimes.jp/2017/03/26956.html