PSAはGMの独子会社オペルと英国ブランドであるボクソールの買収により、欧州市場のシェアが17%に拡大し、独フォルクスワーゲン(VW)・グループに続く欧州2位のメーカーとなる。
オペル/ボクソールの2016年の売上高は177億ユーロ。欧州に約3万8,000人の従業員を抱えている。うち、ドイツは約1万9,000人を占めている。オペルは1929年から88年間の長期に渡りGMの傘下にあったが、1999年から18年に渡り赤字が続いている。
■ 金融事業ではBNPパリバと協力
PSAは、金融事業の買収では、仏銀行大手のBNPパリバと協力する。両社で折半出資の合弁会社を立ち上げ、GMファイナンシャルの欧州事業を引き継ぐ。金融事業の買収額9億ユーロのうちBNPパリバは4億5,000万ユーロを負担する。
■ 20年までに黒字化を目標
PSAはオペル/ボクソールに対し、2020年までに経常利益率で2%、2026年までに6%を達成する目標を掲げる。また、2020年までにフリーキャッシュフローの黒字化も求めている。
PSAは今回の買収による規模拡大で、調達、生産、研究開発での相乗効果に期待しており、2026年までに年17億ユーロの相乗効果を得られると見込んでいる。
また、GMとPSAは今後の協力に関心を示しており、電気駆動技術で協力するほか、燃料電池システムに関するGMとホンダの提携プロジェクトにPSAが加わる能性もあると言及している。
■ 労使協定は保持、GM特許の使用も可能に
PSAはオペル/ボクソールの既存の労使協定を尊重することを約束した。GMは2018年まで経営上の理由による解雇を行わないことで合意している。
また、今回の取引でGMは約10億ユーロの年金債務を引き受けるほか、オペル車に使用されているGMが保有する特許の使用を認める。例えば、オペルは引き続き電気自動車「アンペラE」を販売することができる。
ただ、GMの技術を搭載したオペル車は、GMグループのモデルと競合する市場には輸出することができない。このため、中国や米国では大半のオペルモデルを販売できないことになる。GMの技術を使用していないモデルは制限なしに世界市場で販売することができる。
なお、研究開発拠点については、ドイツのリュッセルスハイムは買収対象に含まれるが、イタリアのトリノにある開発センターはGMが今後も保持する。
PSAは自動車事業の買収価格のうち6億5,000万ユーロはPSA株に転換できる社債で支払う。このオプションは早くても5年後に交換が可能であり、遅くとも9年後には売却しなければならない条件となっており、GMがPSAの中期的な業績改善で利益を得る仕組みを導入した。
■ GM、販売台数縮小も収益性改善を重視
オペル/ボクソールの売却により、GMの販売台数は約880万台に縮小し、これまで販売台数を競っていたVWやトヨタに大きく水を開けられることとなる。グローバル事業の特性も弱まるが、GMは赤字続きのオペル/ボクソールの売却により、収益を改善し、米国や中国など中核事業に注力する。オペル/ボクソールの2016年の販売台数は約120万台で、GMの売上高の約11%を占めていた。
英国が欧州連合(EU)からの離脱を決め、欧州事業の採算を悪化させる一因となることも、オペル/ボクソール売却の決定を後押ししたと見られている。
ソース: http://fbc.de/auto/ai15126/