縫製労働者のEang Sok Nathさんは、しばしば週に6日、12時間も勤務する。しかしこうした長時間労働と年初の昇給にもかかわらず、26歳のEangさんは生計を立てるのに苦慮している。
「1月に私は933,000カンボジア・リエル(230米ドル)を稼ぎましたが、すべての物価上昇がそれを上回りました。」とEangさんはウェブニュースサイトのDEUTSCHE WELLEに対して言った。「野菜、肉、魚はすべて値上がりし続けています。また給与が上がる直前に、家主は部屋の家賃を月額20,200カンボジア・リエル(5米ドル)も値上げしてきたのです。」
カンボジアのアパレル産業は長年にわたり非難の的となっている。この国で多くが働く非公式な雇用部門では、労働者は工場で残業を強要され、劣悪な労働条件の元で働いている。いくつかの調査によると、アパレル業界で働く約70万人の給与はあまりにも低く、まともな生活を送ることさえままならないという。
今年の年初に最低賃金が月567,000カンボジア・リエル(140米ドル)から620,000カンボジア・リエル(153米ドル)に増額されたものの、この9%程度の増額ではほとんど生活の改善が見られていない。また今年から労働者は、国の健康保険に毎月拠出することが義務付けられるようになった。この健康保険は医療措置を受ける際に資金を節約することができるものの、多くの労働者は給与増額分の大部分がそれに費やされるようになったと感じている。
プノンペンの工場で働いているPhon Chaneさんは、「健康保険に月額14,200カンボジア・リエル(3.5米ドル)も拠出することが求められています。」とDEUTSCHE WELLEに対して述べた。「週末に市場に行くと、1週間前に500カンボジア・リエル(12米セント)で買えた野菜が1000カンボジア・リエル(25米セント)になっていました。だからこの程度の増額では何も変わらないのです。」とPhonさんは続けた。
生活費の増加
多くの労働者は給与が増える度に、生活費もまた増加することに苦しんでいる。家賃、電気料金は上がり、食料や交通費も高くなっている。
Phon Chaneさんのこうした状況はカンボジアでは珍しいことではない。過去4年間で最低賃金は2013年の324,000カンボジア・リエル(80米ドル)から、今年は620,000カンボジア・リエル(153米ドル)にまで徐々に増額されたものの、賃上げの都度、家主は家賃を上げ、食料や交通費の値段も上昇した。
加えて現在の最低賃金は、労働組合と組合活動家の連合組織であるAsia Floor Wage Allianceがカンボジアに推奨する生活賃金水準の1,150,000カンボジア・リエル(285米ドル)をはるかに下回っている。
カンボジア政府は2015年に、最低賃金の上昇分が家主に搾取されないようにするため、家賃管理法を施行することでこの問題を解決しようとした。しかしこの法律の強制力は弱く、家賃の上昇を止めることはできなかった。この数週間で実施したインタビューによると、1月も家賃が12,000〜20,000カンボジア・リエル(3〜5米ドル)の水準で値上がりしたとの報告があった。
(後編へつづく)