独オペルと英ボクソールからなる車両事業と欧州金融事業をGMから譲り受ける。取引金額はそれぞれ13億ユーロ、9億ユーロで、合わせて22億ユーロ。GMの欧州金融事業は仏銀BNPパリバと折半出資で取得することから、PSAがGMに支払う金額は計18億ユーロとなる。独禁当局の審査を経て買収手続きが年末までに完了すると見込んでいる。
取引対象となるのは組立工場6カ所、システム部品工場5カ所、オペルの本社所在地である独リュッセルスハイムにある研究開発拠点で、PSAは従業員合わせて約4万人を引き継ぐことになる。伊トリノにある開発拠点はGMが引き続き運営する。(表を参照)
オペルとボクソールは当面、GMからライセンスを受けて車両を生産。GMに対しライセンス料を支払う。将来的には漸次、PSAのプラットフォームへと切り替えていく。
PSAは買収後、調達、製造、研究開発でシナジー効果を引き出していく考えで、2026年までに年間コストを17億ユーロ圧縮する計画だ。PSAのカルロス・タバレス最高経営責任者(CEO)は記者会見で、同コスト削減目標を工場閉鎖なしに実現すると強調した。オペル/ボクソールの黒字転換を20年までに達成するとしている。
GMはオペルを1929年に買収した。欧州事業は赤字が恒常化し経営の重荷となっていることから、PSAに売却する。今回の取引により特別費40億~45億ドルを計上する見通しだ。
PSAは経営危機に陥った14年、中国同業・東風汽車の戦略出資を受け入れ、中国市場開拓の足場を築いた。東南アジア市場の攻略も視野に入れており、マレーシアの国民車メーカーであるプロトン・ホールディングスに先ごろ買収提案を行ったところだ。
オペルはこれまで、成熟市場である欧州を除いて販売活動を原則的に禁じられていた。GMが欧州以外で展開するブランドとの競合を避ける必要があったためだ。PSAの傘下に入ればこうした制限がなくなり、中国や東南アジアでの販売も可能になる。
PSAにとってオペルは事業規模拡大のほか、フランス車を好まない消費者の獲得にも役立つというメリットがある。ただ、PSAもオペルも量産車メーカーであり、市場成長の余地が小さい欧州では競合関係にあるのも事実だ。このため、欧州市場での棲み分けや事業のグローバル化が思惑通りに進まなければ、既存拠点の統廃合や人員削減は避けられなくなるとみられる。
その場合はオペル側の拠点が整理対象となる可能性が高い。PSAにはフランス政府が出資しており、同国での大規模な雇用削減には強い圧力をかけて阻止すると予想されるためだ。
ソース: http://fbc.de/sc/sc39383/