政府と自民党は、旅館・ホテル業界からの反発を受け、民泊の営業日数を条例で制限できるようにする調整に入った。民泊新法では営業可能日数180日以内という「一定の要件」を満たす必要がある。さらに規制を強める案も出ているが、過度な規制は参入を減少させる事も予測させる。
2020年東京オリンピック開催に向け、訪日観光客が急増している。2016年度は、前年度比約47%増を記録していた2015年からさらに20%超の成長を見せ、その数は2400万人を突破した。政府は2020年に4000万人という目標を掲げている。年約11%以上の成長を続ければ実現可能であり、現状の成長率をみると実現性のある目標となっている。
しかし、それに伴い訪日観光客を受け入れる旅館やホテルの不足が深刻な問題となっている。みずほ総合研究所の調査によると、合計約4.4万室の宿泊施設が不足する見通しだという。そのうち特に客室不足が深刻なのは、東京(1万7728室不足)と大阪(1万4273室不足)。供給の面でも民泊にかかる期待は大きい。
外国人にとって、自宅の一室や空きマンションに観光客を宿泊させる「民泊」には、ローカル体験をできるというメリットも有る。また、エアービーアンドビーが海外でもすでに普及しているプラットフォームでもあり、急伸をみせている。
一方、国内の旅館・ホテル業界は確かに外国人へのPRで苦しむこともある。ゼロから自社のホテルを、多言語で独自PRするのは容易ではない。しかし、民泊にも独自の需要があるように文化と伝統を兼ね備えた旅館と、体験型アクティビティを取り込んだホテルなどにはやはり、訪日外国人の需要があるのは間違いない。
2016年6月期のホテル稼働率は約78%であり、現状でも供給を伸ばせる。政府が、民泊の規制を強めるより、旅館やホテルのPRなどを補助することが、反発などをおさえ、民泊の規制を抑えることにも繋がるのではないか。
2020年インバウンド市場において、客室供給不足が予測される中、旅行・ホテル業界には民泊への反発以前に、独自の強みを活かせる戦略で訪日観光客への供給を拡大してもらいたい。それに伴い、民泊のさらなる拡大にも期待したい。