監査法人大手アーンスト・アンド・ヤング(EY)が1月25日発表したレポートによると、中国企業が2016年に欧州で実施した買収・出資(今年1月16日時点で買収・出資手続きが未終了の案件を含む)は計309件となり、前年を48%上回った。取引総額は858億ドルで、2.8倍の規模に急拡大している。
この傾向はドイツ企業を対象とした取引でも認められ、件数は70%増の68件に拡大。総額は約24倍の125億6,000万ドルに達し、15年までの累積総額を上回った。
M&A(少数出資を含む)の総額が大幅に増加したのは、件数が増えたうえ、大型案件も相次いだためだ。特にスイスの農業化学大手シンジェンタを対象とする中国化工集団(ケムチャイナ)の買収(約442億ドル)はケタ違いで規模が大きく、2位以下を圧倒している。
中国企業による対欧州M&Aを国別でみると、件数が最も多かったのはドイツで、前年の40件から68件へと拡大。前年にトップを分け合った英国は47件で2位に転落した。3位はフランスとイタリアでともに34件。5位以下はオランダ(21件)、スイス(11件)が続いた。
欧州企業に対するM&A309件の内訳を分野別でみると、最も多かったのは機械などの加工組立で、72件を占めた。これにハイテク(42件)、エネルギー・電力(29件)、素材(28件)が続く。
対欧州M&Aのうち下半期に発表があったのは133件で、上半期(176件)から24%減少した。中国の家電大手・美的集団による独産業ロボット大手クーカの買収を受けて、高度な技術の流出に対する警戒感が欧州で強まったことが背景にある。中国の投資会社・福建芯片投資基金(FGC)による独半導体製造装置メーカー、アイクストロンの買収計画は米独政府の圧力を受けてとん挫。独照明大手オスラムの買収を狙った中国企業も断念に追い込まれた。
資本の急速な流出に直面する中国が自国企業の国外M&A活動に対する規制強化に乗り出したことも影響した。
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