特に輸出志向の強い業界では懸念が大きく、米国のトランプ次期大統領がトヨタ自動車のメキシコ工場建設計画に圧力をかけたことは「他人事ではない」と受け止められている。
Ifo経済研究所のドイツ企業景況感指数は12月に111.0へと達し、2年7カ月来の高水準を記録した。現状判断が特に良好だったことが大きい。GfKドイツ消費者景況感指数の1月向け予測値も9.9となり、2カ月連続で改善した。
だが、企業の業績見通しは現状判断ほど明るくないもようだ。財界系シンクタンクIWドイツ経済研究所が国内の48業界団体を対象に実施した年末アンケート調査によると、「生産高ないし売上高・業績が2017年に大幅に拡大する」と回答したのは旺盛な住宅需要の恩恵を受ける建設など3団体にとどまった。「やや拡大」の25団体を合わせると28団体が「拡大」を見込んでおり、「縮小」の8団体を大きく上回っているものの、「縮小」を予想する業界には欧州中央銀行(ECB)の超低金利政策の直撃を受ける金融や構造不況に直面する印刷だけではなく、基幹産業である自動車や、輸出志向の強いゴム加工、卸売・貿易も含まれている。
背景には「米国第一主義」を掲げる共和党のトランプ氏が20日付けで大統領に就任することや、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)決定といった主要国での内向き志向の強まりがある。
ブレグジットがEU単一市場へのアクセスを断念する「ハードランディング」になるかどうかは不明だが、ドイツの対英貿易には同決定の影響がすでに出ている。連邦統計局のデータをもとに独商工会議所連合会(DIHK)が行った計算によると、ドイツの対英輸出高は16年1-6月期に前年同期比で0.4%増加したものの、1-9月期には同3%減となった。ブレグジットの是非を問う国民投票は6月23日に行われており、これが響いた格好だ。7-9月期の同輸出高は5.5%落ち込んだ。ポンド安のほか、英国経済の先行き不透明感を受けて現地企業が投資を抑制したことが大きい。
独自動車業界は米経済への貢献強調
米国のトランプ次期大統領は選挙戦で自由貿易反対の立場を鮮明に打ち出し、同国がカナダ、メキシコと結んでいる北米自由貿易協定(NAFTA)などの見直しを公約に掲げてきた。米国がEUと進めてきた環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)交渉も長期中断が予想されており、ドイツの製造業には失望感が広がっている。
トランプ氏は選挙戦の勝利後、メキシコに投資する大手企業に名指しで圧力をかけている。米自動車大手フォードはこれに屈して3日、メキシコ工場建設計画を撤回し、米国内の既存工場に投資を切り替える意向を表明した。
国外企業も標的となっており、同氏は5日、トヨタのメキシコ工場建設計画を批判。新工場の建設地を米国に変更しなければメキシコから米国に輸出するトヨタ車に高額関税を課すと“脅迫”した。
ドイツ企業はこれまでのところ、実名を挙げて批判されていない。だが、メキシコには独自動車メーカーも工場進出しており、VWは50年以上前から現地で生産。ダイムラーはバスとトラックを製造しているほか、来年からルノー日産との合弁工場で乗用車の生産も開始する予定だ。BMWは昨年6月、同国中部のサン・ルイス・ポトシで新工場の起工式を行った。
独自動車工業会(VDA)のヴィスマン会長はドイツの完成車メーカーとサプライヤーが米国で計11万人を雇用するなど同国経済に大きく貢献していることを強調しているが、現地雇用規模が13万6,000人に上るトヨタがトランプ氏から攻撃されたことを踏まえると、同氏を説得する効果はないとみられる。
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