同日の理事会では政策金利は変更せず、主要政策金利を0%、中銀預金金利をマイナス0.4%に据え置いた。
ECBはユーロ圏のデフレ回避と景気下支えを目的に、ユーロ圏の国債や資産担保証券(ABS)、担保付き債券(カバードボンド)、EUの機関が発行する債券などを買い入れる異例の量的金融緩和を15年3月に開始。昨年12月には実施期間を17年3月まで6カ月延長することを決めた。さらに今年3月には、国債などの買い取り規模を月600億ユーロから800億ユーロに拡大し、新たに社債を買い入れ対象に加えていた。
実施機関の延長は、ドラギ総裁が10月に事実上予告していたため、確実視されていた。しかし、規模縮小は予想外。金融市場では発表直後、ECBが緩和を段階的に縮小する「テーパリング」に着手したとの見方が広がり、ユーロ高が進み、ユーロ圏の長期国債の利回りが上昇した。
ユーロ圏の11月のインフレ率は前年同月比0.6%で、31カ月ぶりの高水準となった。なおECBが目標とする2%を大きく下回っているものの、デフレの懸念は遠のき、ECBは同日発表した最新の内部経済予測で、17年の予想インフレ率を前回(9月)の1.2%から1.3%に上方修正した。量的緩和の規模縮小は、こうした状況やユーロ圏の景気が緩やかな回復を続けていることを受けたものだ。
ただ、ユーロ圏では来年にドイツ、フランスなどで国政選挙が実施されることになっており、その結果によって景気が悪化する懸念がくすぶっている。ドラギ総裁は理事会後の記者会見で、量的緩和を延長しながら規模を縮小するという決定について、一部で予想されていた6カ月延長よりも、規模が減っても9カ月延長する場合の方が買い取り総額は多いとして、緩和の面を強調。テーパリングには当たらないと主張した。また、必要に応じて買い取り額を月800億ユーロに戻す用意があることも明らかにし、不安払しょくに努めた。
ECBが規模縮小に踏み切った背景には、量的緩和を続けてきた結果、買い取り対象となる国債が少なくなっていることもある。このため、今回の理事会では償還期限が2年以上の国債しか購入できないという制限を緩和し、1年以上であれば買い取り対象とすることを決めた。また、利回りが中銀預金金利のマイナス0.4%を下回る国債も購入できるようにする。この新ルールは来年1月から適用される。
ソース:http://fbc.de/eur/eur3709/