同レポートの中でグループエムは、2016年にオリンピック・パラリンピックの恩恵を受けたブラジルが景気後退から抜け出すと予測している。
グループエムは、世界の広告費は、ブランド企業が低成長下で効率経営を迫られる中、2017年もさまざまな経済要因から穏やかな伸びにとどまりそうだとしている。また、米大統領選挙や欧州連合(EU)離脱を巡る英国民投票の結果に伴って多方面に不透明感が漂っているが、広告予算には、今のところこれらの影響は出ていないという。
中国などの新興国は、世界の広告費の伸びに大きく貢献し続けているものの、適度な成長というニューノーマル(新常態)が定着しているとのこと。デジタル広告が最も成長の恩恵を受ける状況も、変わっていない。
グループエムは、2017年の広告費は5470億ドル(4.4%増)と予想。
このうちデジタル広告の割合は33%。2016年は新しい広告費支出の1ドルにつき、デジタルが72セント、テレビが21セントだが、2017年にはデジタルが77セント、テレビが17セントになるとしている。
2016年と17年に純増する広告費の半分は米国と中国が支えるが、中国がわずかに米国をリードする。
グループエムによる2015年~2017年のメディア広告費の比較は以下。数字は左から2015年/2016年/2017年(予想)で、単位は100万ドル、現行価格ベース。
北米 183,049/188,675/193,655 (前年比伸び率%) 1.8/3.1/2.6
※うち米国 173,311/178,839/183,523 (前年比伸び率%) 1.8/3.2/2.6
中南米 34,717/36,412/38,772 (前年比伸び率%) 7.7/4.9/6.5
西欧 88,817/92,062/94,847 (前年比伸び率%) 2.9/3.7/3.0
中東欧 12,472/13,456/14,521 (前年比伸び率%) -1.4/7.9/7.9
アジア太平洋(全域) 166,793/176,422/187,492 (前年比伸び率%) 5.9/5.8/6.3
※うち中国 74,151/80,034/86,275 (前年比伸び率%) 7.8/7.9/7.8
中東アフリカ 16,952/17,468/18,085 (前年比伸び率%) 8.2/3.0/3.5
世界 502,799/524,495/547,371 (前年比伸び率%) 3.8/4.3/4.4
グループエムは、中国の広告費が最近増加してきたことから、2016年の伸び率予想を6.6%から7.8%へ修正したとのこと。第2四半期に日用消費財(FMCG)の広告が前年同期比4.6%増加し、予想の2.0%を超えたという。また同国では人口の都市化と堅調な消費者信頼感が引き続き成長を大きく支えているが、最近の2桁の伸びはもう望めないという。グループエムは、成長のピークを過ぎたことで中国の2016年のデジタル広告費は29.5%、来年は21.5%に鈍化すると予測している。
一方、米国は、もう1つの成長の原動力であり続けているとしており、2016年の伸び率を3.1%から3.2%へと小幅に引き上げた。
このうちテレビは3.4%から4.1%へと、前回と前々回の選挙の年(2012年、2014年)並みに修正した。2016年は選挙広告があまり盛り上がらなかったが、その分を夏のオリンピック需要が補ったという。広告予算はデジタルからテレビへの逆流現象が一部で起きており、特に医薬品と消費財(CPG)の分野でそれが顕著だったとのこと。
2017年については世界と米国の国内総生産(GDP)成長率が弱いことから、グループエムは米国の伸び率を2.6%に下げたが、政治の不透明感はまだ広告予算に影響していないとしている。
英国においては、EU離脱(ブレグジット)を決めた国民投票の結果は金融市場に影響を及ぼしたが、これまでのところ広告には影響が出ていないという。グループエムは最近、英国の年間予想をデジタルの活況から7.0%に上方修正し、2016~2017年の2年間で広告投資が30億ドル増えるとした。この数字は英国を除くEU全体では33億ドルになる。
またグループエムは、最近オリンピック・パラリンピックの恩恵を受けたブラジルが、景気後退から抜け出すとみているという。ブラジルではデジタル広告が増加、特に携帯電話向けが好調だという。携帯電話の利用者は2016年になって22%増えて7400万人に達した。2017年の伸び率予想は2%で、ブラジルは世界5位の広告大国の座を維持するとしている(米国、中国、日本、英国、ブラジル、ドイツの順)。
インドは世界で最も成長著しい広告市場で、市場規模は100億ドル強と世界10位。伸び率の予想は2016年が13.8%、2017年は12.5%。低金利や都市での需要、主要改革が経済を後押ししている。
ロシアは第1四半期から急回復が続き、グループエムの2016年の予想は9.5%へと高くなった。第4四半期のテレビ広告の高い需要とペイドサーチ(広告連動型検索)の増加が主因となった。ペイドサーチの需要の半分以上は、ほかのメディアには手が届かない小規模企業からだが、大手広告主の需要も強い。2017年はテレビとインターネットを中心に10%伸びる見通しだという。
「This Year, Next Year by GroupM’s Futures Director, Adam Smith(グループエムのフューチャー・ディレクター、アダム・スミスによる今年と来年)」における各種予想の情報は、広告やPR、マーケットリサーチ、専門家インタビューなどWPPの世界的リソースから集められているという。グループエムの情報はhttp://www.groupm.comを参照。
「2010年以来の世界経済の長期、低回復傾向で広告の伸びが抑えられているが、今回の新しい予測ではわれわれの時代の広告状況が景気循環的ではなく、構造的なことが浮き彫りになった。インターネットが考え抜かれた広告媒体になって20年が過ぎたが、デジタルは広告の成長エンジンであり、またマーケティング経済全体の第1の波乱要因である。これによって選択、チャンス、リスクが多様化している。広告主にとっては自主性と努力が今までになく重要だ」(アダム・スミス・フューチャー・ディレクター)
グループエムは、世界最大のメディアコミュニケーション・エージェンシーで、総合的なメディアプランニングおよびメディアバイイングを中核とした事業を展開しているとのこと。取扱額と市場シェアは、世界中のほぼすべての主要マーケットと地域でトップに位置しているという。
(文/麻生雅人、写真/Bruno Fortuna/Fotos Públicas)
ブラジル地理統計院(IBGE)によると、ブラジル国内では、2014年にインターネットへのアクセスに利用されるツールとして携帯電話がPCを上回ったという
ソース:http://megabrasil.jp/20161207_32932/
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