メルケル首相が続投方針を表明、ポピュリズムの台頭に危機感
ドイツのメルケル首相は20日、来年秋の連邦議会(下院)選挙に中道右派キリスト教民主同盟(CDU)の首相候補として出馬する意向を表明した。難民問題をめぐる路線対立を受けて姉妹政党キリスト教社会同盟(CSU)との関係が悪化したことから、出馬表明を見合わせてきたが、今月上旬の米大統領選挙で北大西洋条約機構(NATO)や環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)協定の見直しを主張するトランプ候補が勝利するなどポピュリズムの潮流が欧米で急速に強まり、人権や民主主義といった西欧の基本的な価値観が揺らいでいることから、続投を決意した。再び首相に選出されると4期16年の長期政権となる見通しだ。
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メルケル首相は2005年の就任後、国内で高い人気を長く保ってきた。経済が好調なうえ、リーマンショックに伴う金融・経済危機、欧州債務危機、ウクライナ危機などに粘り強く冷静に対処し一定の成果を上げたためだ。欧州で最も影響力のある政治家となっている。
だが、欧州に流入した難民を昨年、大量に受け入れたことから支持率が低下。CSUからは難民政策を正面から批判され、同党との関係が悪化している。
CDUとCSUは連邦議会で統一会派を組んでおり、両党の関係が悪化した状況下では続投方針を打ち出しにくいという事情があり、メルケル首相は出馬するかどうかの意向表明を先送りしていた。ただ、CDUとCSUには同首相の跡を継げるだけの後継者が育っていないことから、仮に続投を断念するとCDUだけでなくCSUも大きな痛手が避けられないとみられていた。CSUのゼーホーファー党首(バイエルン州首相)はCDUとの政策方針の相違を認めながらも、メルケル首相の出馬方針に支持を表明した。
EUは難民問題で加盟国間の齟齬が強まっているうえ、6月には英国が国民投票で離脱(ブレグジット)を決定した。また、米大統領選挙でのトランプ候補の勝利はEU懐疑派の追い風となっており、来年春に行われるフランスの大統領選挙ではEU離脱を主張する極右政党・国民戦線(FN)のルペン党首が勝利する可能性もある。欧州統合というEUのプロジェクトそのものが危機にさらされている状況だ。ドイツでも移民排斥政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が勢力を拡大している。
人権・民主主義といった“開かれた社会”の価値観を信条とするメルケル首相はこうした現状を踏まえて再出馬を決意した。記者会見では「どんなに経験豊かな人間であってもドイツ、欧州、世界の状況をたった一人で好転させることはできない」と強調。成功には協力が必要だとして有権者に支持を訴えた。
メルケル首相の支持率はこのところ回復傾向にあり、続投に賛成の有権者は8月の50%から55%へと上昇している。
ソース:http://fbc.de/sc/sc38967/
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