メルケル首相は9日、トランプ候補の勝利を祝福する声明のなかで、ドイツと米国が民主主義、自由、法の尊重、人間の尊厳という価値を共有していることを強調したうえで、トランプ次期大統領とはこれらの価値に基づいて緊密に協働していきたいとの立場を表明した。また、経済、軍事で大きな力を持つ米国の大統領の影響力は国境を越えて世界に及ぶとして、同国大統領が担う責任の重さを指摘。内向き志向な政策をとらないようけん制した。
閣僚レベルの反応はストレートで、ガブリエル経済相(副首相)は「トランプは新しい権威主義・排外主義インターナショナルの先導者だ」と批判。ロシアのプーチン大統領、トルコのエルドアン大統領と同レベルの問題のある政治家だと酷評した。
「インターナショナル」という言葉はもともと労働者の国際連帯を目指す社会主義の“合言葉”であったが、欧米では近年、自国中心の極右・ポピュリズム政党が反グローバリズム・反欧州連合(EU)の旗印のもとで横のつながりを強めている。英国のEU離脱運動を先導した英国独立党(UKIP)のファラージ党首代行が12日、当確直後のトランプ次期大統領と会談したのはそうした流れを象徴する出来事だ。
フォンデアライエン独国防相はトランプ候補の勝利を「大きなショックだ」としたうえで、「我々はこの現実に取り組まなければならない」と発言。同候補が北大西洋条約機構(NATO)の集団安全保障体制の見直しを要求したことを踏まえ、欧州は自らの防衛能力を高めていかなければならないとの認識を示した。
独商工会議所連合会(DIHK)のヴァンスレーベン専務理事は、EUと米国が締結を目指す環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)協定を批判してきたトランプ候補の勝利を受けて「ドイツ企業に大きな困惑が広がっている」ことを明らかにした。「ほとんどのドイツ人は違った選挙結果(ヒラリー候補の勝利)を望んでいた」とも述べている。
独産業連盟(BDI)のグリロ会長は「人々の不安をあおるポピュリズムの政治は見かけ上の解決策を提供するに過ぎず、実際には人々と経済に大きな害をもたらす」と指摘し、トランプ次期大統領を批判した。また、選挙戦で繰り広げてきた孤立・保護主義的な言説を止めるよう要求。「米国は開かれた市場をこれまでに引き続き尊重しなければならない」と訴えた。
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