テンゲルマンは2014年10月、カイザースをエデカに売却することで合意した。カイザースは事業規模が小さくほぼ20年間、赤字が続いており、単独で生き残るのは不可能と判断したためだ。
だが、同取引はカルテル庁から承認されず、経済相の諮問機関である独占委員会もカルテル庁の決定を妥当とする判断を示した。ガブリエル経済相はそれにもかかわらず、エデカによるカイザース買収を特例として承認した。独占委の提言に沿わない異例の措置であり、競合レーベ、ノルマ、マルカントの3社が提訴。デュッセルドルフ高等裁判所は7月、同承認を無効とする決定を下した。
エデカとテンゲルマン、経済相はこれを不服として最高裁の連邦司法裁判所(BGH)に異議を申し立てたものの、カイザースでは月当たり1,000万ユーロの赤字が出ていることから、テンゲルマンはカイザースをズルズルと保持し続けられない状況にあり、カイザースの清算が現実味を帯びてきた。
これに危機感を持ったサービス労組Verdiの働きかけで関係各社はカイザースの分割取得に向けた協議を行ったものの、10月13日に決裂。テンゲルマンはカイザースの分割売却に向けた手続きを開始していた。
シュレーダー前首相などの調停はこれを受けて開始されたもので、31日に各社の基本合意が成立した。合意内容は明らかにされていないものの、消息筋の情報として『ビルト』紙が報じたところによると、首都ベルリンにあるカイザースの店舗120カ所のうち50カ所強をレーベが取得。エデカはバイエルン州の店舗を獲得する。またレーベは、エデカによるカイザース買収を特別承認した経済相決定に対する訴訟を11日までに取り下げることを確約した。ノルマとマルカントはすでに訴訟を撤回しており、裁判は中止されることになる。
各社は今後、同調停をベースにどの店舗をどの企業が取得するかなどの詳細を取り決めていく。ガブリエル経済相は「カイザースの1万5000人の従業員は失業の不安なしにクリスマスを祝うことができる」と明言した。
同取引の成立にはカルテル庁の承認が必要となる。ドイツの食品小売市場は寡占状態にあり、同庁は以前から問題視している。今回の取引が実現すると寡占が一段と進むことになるため、厳しい独禁審査が行われるとみられる。
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