カンボジア、後進国ゆえの低賃金に民衆の不満高まる
独裁主義的な法規制で、世界でも最悪の労働環境の国の一つとされるカンボジアから衣料品を調達している大手の欧米系小売業者は、衣料品産業の最低賃金を月額約40米ドルへ賃上げする提案について支持しないことを表明した。
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東南アジアの近隣諸国同様、カンボジアはアメリカや欧州のブランドにとって繊維製品や履物生産の主要な委託先である。カンボジアは市場へのアクセスが容易で、何よりも安い労働力を提供している。そうした背景により、Walmart やNikeなどトップ企業からの委託契約に牽引され、衣料品・履物輸出は過去10年間で2倍以上増加している。
しかしアパレル業界は順風満帆なわけではない。近年この業界で圧倒的に多数を占める女性労働者がより高い賃金を求めてマス・ストライキや抗議活動を繰り広げ、何人かの労働者が2014年1月の警察の取り締まりで殺害される事件も起きた。そして今、更なる緊張が高まっている。
今月数十万人の縫製労働者を代表する労働組合は、現状月額140米ドルのアパレル業界最低賃金水準を179.6米ドルまで引き上げることを提案したが、彼女らは工場経営者のロビー団体であるカンボジア縫製業協会(GMAC)からの強い反対に会い、月額144.20米ドルのカウンターオファーを示された。多くの欧米ブランドもまた、組合の提案に対して支持しないことを表明した。
In These Times誌はカンボジアに委託契約を持つ欧米系の大手ブランドのうち、Walmart、Nike、Adidas、Levi Strauss & Co.、H&M、Gap Inc.の6社にアプローチし、組合の要求する最低賃金引き上げに対する意見を求めた結果、いずれの会社も提案支持を表明しなかった。WalmartとNikeは回答を示さず、Adidas、Levi’s、H&M、Gapの4社は現在進められている賃金交渉をサポートすることだけを強調した。
「H&Mは、カンボジアの縫製産業における透明性のある最低賃金の定期交渉プロセスを歓迎します。」と同社の広報担当者であるUlrika Isaksson氏は述べた。「我々は当事者同士が誠実に交渉し、双方にとって受け入れられる結果となることを強く願っています」
H&Mは2014年に労働者は「適正な生活賃金を受ける権利を持っている」ことを主張し、書簡をカンボジアの副首相に送ったグループの一員であった。 労働者の権利団体らは、欧米のブランドは今こそ強い意志を示すべきだとしている。
「彼らは労働組合の賃金引上げ提案をバックアップし、責任を持って実行すべきです。」とミャンマーを拠点としてビジネスと人権に関するコンサルティングを行うIrene Pietropaoli氏は述べた。「彼らにはそのような法的義務はないものの、明らかにこの交渉の鍵を握る存在なのです。そのため彼らは自ら率先して「影響力」を行使し、ビジネスと人権に関する国連フレームワークの文言を利用するなどして、政府に影響を及ぼしていく倫理的な責任があると考えます」
2011年に国連人権理事会によって起草、承認されたこの画期的な文書は、企業に対して「人権に対する不利益」を防止するために、彼らの「影響力」を行使することを求めている。
労働者の側からすると、(交渉の成否は)正にこれにかかっている。労働組合や権利団体の国際的な提携組織であるアジア最低賃金同盟(Asia Floor Wage Alliance)は、衣料品産業に焦点を当て、カンボジアの「生活賃金」は月額283米ドルであると算出、その額は組合の要求する額よりもはるかに高いと主張した。
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