トルコのクーデター未遂、今後のトルコ景気に減速の懸念
トルコのクーデター未遂事件を受け、同国の景気減速がさらに進むことが懸念されている。頻発するテロ事件やクルド人武装勢力との衝突などで、ただでさえ政情不安が高まっている中、クーデター後のエルドアン大統領の動向から強権政治化が進行する恐れがあるためで、これまで好調だった株価にも影響を与えそうだ。
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クーデター発生が報じられた15日夜、通貨リラの対米ドル為替相場は6%下落し、1日の下げ幅としては2008年の金融危機以来最大となった。このため、輸入製品を中心に価格が上昇し、6月に7.6%に増加したインフレ率がさらに悪化することが予想される。
過去3年間で通貨リラの対ユーロ為替相場は30%強、対ドル相場は50%以上、低下している。ドルに換算したトルコの対外債務は4,000億ドル弱に上り、その大半がドル建てだ。
為替安で借金が膨らんだ企業が倒産するケースが増加し、銀行の不良債権は増えつつある。信用保険大手ユーラーヘルメスは5月の時点で、同国の倒産件数が今年8%増加すると予測している。
主要産業の観光業界は300万人を雇用するが、政情不安に加えて昨秋のロシア軍機撃墜事件の影響でロシア人観光客がほぼゼロに激減し、大きな痛手を負っている。クーデターがこの状況への追い討ちとなるのは避けられない。
トルコはエルドアン氏が首相に就任した2003年以降、5~8%の経済成長を記録していたが、2011年の8.8%を最後に減速傾向が明らかになっている。国際通貨基金(IMF)が4月発表した今年の成長予測は3.8%。人口増加を加味すると、新興諸国の成長率としては低い。
成長ペースが速まらなければ、若年失業率が高まる恐れもある。現在でも失業率は10%弱、農業を除くと12%弱に上っている。
イスタンブール証券取引所の主要インデックス(ISE100)は年初から16%上昇する好調さを示していたが、今後は勢いが弱まりそうだ。政情不安に加え、エルドアン大統領が権限の強化を推し進め、分権制度を骨抜きにしかねないという懸念もその傾向を強める。
トルコは経常赤字が大きく、外国からの資金供給へ経済が依存している度合いが高い。証券市場での投資活動が鈍れば、ここからもトルコ経済にブレーキがかかる恐れがある。
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