キャメロン氏は6月23日に実施された国民投票で英国のEU離脱が決まった直後に、辞意を表明した。これを受けて保守党は次期首相を決める党首選を開始。7日に行われた2回目の投票で女性のメイ氏(内相)、アンドレア・レッドソム氏(エネルギー担当閣外相)が最終候補に残り、9月9日に決選投票の結果が発表される予定だった。しかし、レッドソム氏が11日に突然、撤退を表明。メイ氏の当選が決まった。これを受けてキャメロン氏は同日に前倒しでの辞任を発表し、新首相が予定より約2カ月早く決まった。
党首選の決選投票では、メイ氏が圧倒的に優勢とみられていた。レッドソム氏は情勢が不利となっていることに加え、子供がいないメイ氏より「母親である自分の方が首相にふさわしい」という発言が差別的として猛反発を浴びたことなどから勝機はないと判断し、選挙戦からの撤退を決めた。
メイ氏は国民投票でEU残留を支持していた。しかし、党首選に出馬してからは、投票結果を尊重することを明言。後戻りはないとして、残留に向けた2度目の国民投票実施をきっぱり否定してきた。次期首相就任が決まった11日午後には、「ブレグジット(英国のEU離脱)は文字通りブレグジットだ」と述べ、EUとの離脱交渉を成功に導く決意を示した。
注目されていた組閣では、新設の離脱交渉担当相に離脱派の大物議員であるデービッド・デービス元欧州担当相、外相に離脱派の中心人物だったボリス・ジョンソン前ロンドン市長を任命。EUなどとの新たな貿易協定の交渉を担う新設の国際貿易相にも離脱派のフォックス元国防相を起用した。
財務相には残留派のフィリップ・ハモンド前外相、内相には同じく残留派のアンバー・ラッド前エネルギー・気候変動相が就任した。離脱の是非をめぐって生じた保守党内の亀裂を修復するため、両派に目配りした布陣となった。EUとの交渉役となる3閣僚の離脱派起用は、交渉に強硬姿勢で臨む決意を示した格好だ。
photo by Ukraine Forum on Asset Recovery