【外国人の視点】誤解されやすい日本のビジネスマナー、海外との違い
大した用事はないのに挨拶のために行く表敬訪問や、根回し後の会議など、海外のビジネスの常識とは異なる独自のやり方が多いのが理由の一つである。さらに、海外とのビジネス交渉では、日本人側が意図することが相手の外国人に伝わっていないことが大半である。そこで今回は、そんな日本と海外のビジネスの進め方のズレを如実に物語る2つのストーリーを紹介しよう。
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パリの家具店にやってきた日本のサラリーマン
先日、パリの家具屋で面白い話を聞いた。その店のオーナーは元バリバリの証券マンで、筆者が日本人だと知ると否や、「日本って本当に素晴らしい国だよね」と褒めたたえる親日家だった。日本は食べ物が美味しく、文化もエキゾチックで、サービスの質が良いと、あれこれ日本の感想を言ったあと、彼はこう言った。
「でも、日本人って本当に何を考えているかわからないよね。」
ある日、彼のお店に日本人ビジネスマンが数人やってきたそうだ。あれこれ商品の質問を投げかけては、ぼそぼそと日本語で内輪の会話をし、また質問する。そんなことの繰り返しばかりで、店主のほうから「どんなソファーをお探しですか?」と尋ねてみても、これといってはっきりとした回答が返ってこない。最初は熱心にセールストークをしていた店主もしばらくして、「買う気がない客」と判断したという。しかし、不思議なことに、この日本人たちはその次の日も、またその翌週も店を訪れた。店主はたちの悪い冷やかしだと思ったそうだ。
しかし、それから数日後、この日本人ビジネスマンから大量のソファーの注文が入ったそうだ。どれも値が張る商品ばかりの注文で、店主はたいそう喜んだが、同時に「買う気があるなら最初から言ってくれれば、もっと違った対応ができたのに」と悔やんだ。
これは、日本のビジネスマンの決定の遅さを如実に表しているストーリーだろう。日本人は「完璧な状態に仕上げてからでないと表には出せない」と考えるために、ビジネスにおいても中途半端な状態ではなく完璧なものができると想定できた状況で初めてOKを出す。フランスのビジネスでは「ほぼほぼ決まり」の状態でゴーサインを出すので、コミュニケーションにズレが生じてしまったのだ。
日本人との交渉に失敗した外国人ビジネスマン
他にもこんな話がある。日本でビルの賃貸取引を交渉したイギリス人のルイスの話だ。同僚のアラブ人を引き連れ、ビルのオーナー会社である社長と面談に来た彼は、日本人がいかに面目を大事にしているかを思い知ったという。
70歳くらいの日本人社長は通訳を通して、面談の最初の30分間、いかにこのビルの評判がいいか、メリットは何かを説明した後、ビルの賃貸料を提示した。同僚のアラブ人はそれを聞いて即座に、社長が言った賃貸料の半額を払うと言い、交渉を始めようとした。すると、社長と通訳はすぐに腰を上げ、お辞儀をしながら微笑んで、部屋を出て行ったのだ。それ以降、ルイスはこの社長に会うことはなかった。
この時の出来事をルイスは、日本人とアラブ人の交渉の仕方のズレが原因で、交渉決裂になってしまったのだと振り返っている。日本人に対しては、面目をつぶすことなく、常に礼儀正しくいなければならない。また、日本人は外国人との交渉決裂の場合でも、はっきりとNOとは言わないと彼は解説している。病欠や休暇中、忌引休暇などの理由を言われて、二度と会えなくなるだけだそうだ。
海外ビジネスで誤解されないためには…
このように外国人ビジネスマンには、日本人が意図することが伝わっていない場合が多い。「相手はこちらの意向をくみ取ってくれるだろう」という期待は、日本人相手のビジネスならいいが、外国人相手には通用しないのである。日本人相手なら、ここまではっきり言ったら失礼かもしれない…と疑ってしまうレベルのことを、外国人相手には口に出して伝える必要がある。
元々、文化や言語が違う相手なのだから、日本人の内輪だけで勝手に完結するよりも、互いにもっとコミュニケーションをとって、日本人相手の商談以上に情報を交換し合うべきだ。ビジネスの進め方の常識がいかに違うのかを理解しつつ交渉を進めたほうが、両者にとってプラスであることは言うまでもない。日本人のビジネスマナーが海外に誤解されやすい原因の根底は、この大切なコミュニケーションを省いてしまうからではないだろうか。
しかし、そうはいっても日本のビジネスの仕方が世界から見て劣っているというわけでは決してない。確実に期日までに仕上げる正確さや、一度決断したことをはひっくり返さない一貫性など、ビジネスにおける「信頼性」という点では、日本は世界に数段勝る。
だからこそ、日本人のビジネスマナーが早々に誤解されてしまうのは、本当にもったいないことだと思う。良さを知ってもらえれば気に入ってくれるかもしれないのに、早い段階で誤解され、関係を切られてしまっては、アピールするチャンスも巡ってこない。
こんなもったいない状況に陥らないためには、やはりコミュニケーションを省いていてはダメである。ストレートで、ダイレクトで、少しぶしつけにも思える海外の交渉の仕方を学べば、信頼性の高い日本のビジネスマンが得られるチャンスはさらに広がるだろう。
写真:Flicker – Andreina Schoeberlein
参照:http://www.businessinsider.com/negotiating-with-japanese-2014-5?IR=T
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