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多国籍企業に納税額の国別報告義務付け、税逃れ対策でEUが新提案

 
欧州委の試算によると、税制の抜け穴を利用した多国籍企業の節税策によってEU域内では年間500億~700億ユーロの税収が失われている。同委は昨年1月、企業の課税逃れ防止に向けた「租税回避防止パッケージ」を打ち出し、その中に域内で事業展開する多国籍企業に国別報告書の提出を義務付ける制度の導入を盛り込んだ。EU加盟国も先月開いた財務相理事会で同制度を導入するための法案の内容で基本合意したが、欧州委はパナマ文書の問題を受け、さらに踏み込んだ措置を検討していた。
 
新たな提案によると、対象となるのは域内で活動する多国籍企業のうち、世界全体の売上高が年間7億5,000万ユーロを超える企業。欧州委はEU内に子会社や支社を置く域外の企業を含め、6,000社以上が該当するとみている。当初案は活動実績がある国ごとに納税額などの報告を義務付ける一方、情報開示までは求めていなかったが、新提案によると、対象企業は国別の従業員数、売上高(関連会社間の売上高を含む)、税引き前損益、課税額、納税額などをそれぞれの国の税務当局に報告すると同時に、少なくとも5年間、ウェブサイトで情報を開示しなければならない。
 
一方、国別報告の対象も当初はEU内での活動に限定されていたが、新提案ではタックスヘイブンを含む域外の国・地域での納税額などについても報告・開示が義務付けられる。その際、タックスヘイブン(欧州委は「タックスヘイブン」という用語は使用せず、「税務に関するコーポレートガバナンスがEUの定める一定の基準を満たしていないとみなされる租税管轄国・地域」と定義している)での活動については国・地域ごとのデータを公表しなければならないが、それ以外は国ごとではなく、全体の総額を報告・開示する。
 
欧州委はこのほか、ガバナンスの観点から域外国の課税制度を検証し、租税回避対策に非協力的な国・地域を列挙したEU共通の「ブラックリスト」を策定する方針を打ち出した。現在は加盟国が独自に非協力国のリストを策定して対象となる税法域の監視を行っているが、欧州委は経済協力開発機構(OECD)の基準に沿って早急にEU共通のブラックリストを作り、改善要求に応じない場合は制裁を検討する方針を示している。