EUがVAT制度を大幅見直しへ、軽減税率めぐる加盟国の裁量を拡大
欧州委員会は7日、EUの付加価値税(VAT、日本の消費税に相当)制度の大幅な見直しに向けた行動計画を発表した。軽減税率適用に関する加盟国の裁量を拡大するのが柱で、2017年までに正式な提案を行う。
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EUではVAT制度が中央集権化されており、加盟国は標準税率を15%以上とすることを求められている。一部の品目では軽減税率または非課税とすることが認められているが、対象品目はEUが定める。加盟国が自国の事情から対象品目を拡大しようとしても、税制改正は全加盟国の同意が必要で、実現は難しいのが現状だ。
こうした硬直した制度は、デジタル商品の普及など時代の変化に追いついていないという批判を招き、加盟国との軋轢を生んできた。例えば、フランスとルクセンブルクは電子書籍に出版本と同じく軽減税率を適用したが、EUは電子書籍を課税対象となる電子的なサービスとし、法廷闘争に発展。欧州司法裁判所は昨年、両国の軽減税率適用をEU法違反とする判決を下した。また、英国は女性の生理用品が非課税対象である生活必需品に含まれていないのは不当として、5%の軽減税率をゼロ%とすることを求めてEUと激しく争い、3月にEUから譲歩を引き出していた。
欧州委はこうした状況を踏まえ、時代に沿った制度運用が必要として、大規模な改革に踏み切ることを決めた。
行動計画では軽減税率に関して、(1)対象品目のリストを定期的に見直し、柔軟に対応できるようにする(2)EUが対象品目を指定する制度を廃止し、加盟国が自由に決めることができるようにする。ただし、加盟国間の税制格差によって健全な競争が損なわれるのを防ぐため、軽減税率の数を制限するといったセーフガード措置の導入を検討する――という2つの選択肢を提示した。ただ、欧州委のモスコビシ委員(経済金融問題・税制・関税担当)は品目指定制度の廃止が望ましいとの見解を示した。
このほか行動計画には、電子商取引の普及などで国境を超えた取引が増加していることに伴い、VATの脱税が横行していることに対応するため、製品やサービスの消費国がVATを徴収する制度を改め、輸出国の当局が消費国の税率に沿って徴税し、消費国に納めるシステムに切り替えることなども提案した。
欧州委は今年から来年にかけて詳細な提案をまとめる。提案は加盟国、欧州議会の承認が必要で、制度改革の実現まで数年を要すると目されている。
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