EUのトゥスク大統領らがトルコのダウトオール首相と会談し、双方が今月7日の首脳会議で大筋合意した難民の流入抑制に向けた連携策について協議。最終調整を経て合意に至った。
首脳会議で採択された共同声明によると、EUは今月20日以降、トルコからギリシャに渡った「違法な移民」を原則としてすべてトルコに送り返す。その一方、トルコに強制送還されるシリア難民と同数のシリア難民を、トルコ国内の難民キャンプから受け入れ、昨年9月に決めた加盟国ごとの受け入れ分担枠などに基づいて、EU域内に定住させる。ただし、東欧諸国などが難民の受け入れを拒否しているため、当面EUがトルコから引き取る難民は最大7万2,000人とし、上限に達した時点でスキームを見直す。
EUは難民の強制送還に対し、国連機関などから「国際法に違反する」との批判が相次いだ点に配慮して、ギリシャに到着した難民らを個別に審査し、個々の事情を考慮する方針を確認。トルコとギリシャに対し、難民保護に関する「国際基準」に基づく対応を求めたうえで、難民らの強制送還は「密航ビジネスを排除するための一時的な特別措置」と強調した。
一方、EUは難民や移民をトルコに強制送還する見返りとして、トルコの難民対策を後押しするための資金支援を当初予定の2倍にあたる60億ユーロに拡大するほか、トルコ国民のEU域内へのビザ(査証)なし渡航の手続きを早め、6月末までに実現することを確認した。さらに、トルコのEU加盟交渉を加速させ、35の交渉分野のうち、財政・予算関連の協議を6月末までに開始することで合意した。ただし、ビザ免除に関してEU側は前倒しに伴う条件緩和は行わない方針で、トルコはEUが求める72項目の基準をすべて満たさなければならない。
ダウトオール首相は共同記者会見で「きょうはトルコとEUにとって歴史的な日だ。トルコにとって難民問題は取引材料ではなく、人道的な価値観や欧州の価値観の問題だ」と強調。「トルコはどこからも大規模な援助を受けることなく、これまでに270万人の難民を受け入れてきた。今回の合意がすべての難民の助けになり、トルコとEUの関係強化につながることを希望する」と述べた。
これに対し、トゥスク大統領はトルコとの連携策について「難民問題を解消する特効薬のようにみえるかもしれないが、現実はより複雑だ」と発言。EU内では強制送還する難民の扱いをめぐるトルコ側の対応や、政権に批判的な報道機関への圧力を強めるなど、強権的な姿勢を変えようとしないトルコ政府との関係強化を懸念する声が依然として根強い現状をうかがわせた。
photo by