These are the 6 things I don’t understand about working in Japan.
日本の労働で私が理解できない6つのこと
【1】オープンオフィス
オープンオフィスとは部長から新入社員まで、大勢の社員が机を並べて働く広いオフィスのこと。社内コミュニケーションが活性化させるために巨大フロアに机を並べたオープンオフィスが日本では良しとされているが、欧米人から見ると、この仕切りのないオフィス環境は「古い」のだそうだ。
まるでアメリカの中学校の学食みたいだと語るグレイスさん。オープンオフィスを嫌がる理由として、「気が散るから」と挙げている。仕事に集中したときに変な顔になっていないか、キーボードをタッチする音が大きすぎないかと気になって、仕事に集中できないそうだ。
しかし、日本人でもオープンオフィスを嫌っている人は多いのではないか。彼女の友人の大半は、オープンオフィスでの周りの音が気になったり、プライバシーがないところ、パーソナルスペースがないところ、少し顔を上げただけで人と目が合うところなどが嫌だと言っているそうだ。
社内のコミュニケーションを活発にするためといえば聞こえはいいが、オープンオフィスにすれば誰が熱心に仕事をしているかが一目でわかってしまうので、“周りの目”を気にしながら働くことを余儀なくされているということもできるのではないか。もちろん日本の企業の全てがオープンオフィスではないが、机を“横並び”にして、互いに“他人の目を気にしながら”働かなくてはいけないところが、何とも日本的であり、オープンオフィスは日本の職場環境や企業文化の根幹の部分を象徴していると言えるかもしれない。
【2】ほぼ強制の飲み会
最近は会社の飲み会に参加しないゆとり世代の新入社員が話題になっているが、欧米では職場の人との飲み会は“必ず行かなくてはいけないもの”ではない。グレイスさんも日本の会社の飲み会文化が苦手だそうだが、その理由としては「そもそも職場の人とそこまで仲良くなりたくない」と思っているからだ。仕事の出来によって、性格まで判断されたくないという。
欧米人は仕事とプライベートをきっちりと分けたがる人が多く、職場の人間関係がいくら良くても、金曜日の夜に一発芸をしながらお酒を飲んだり、恋人と別れた後に泣きついて電話するような相手にはならないと彼女は言う。また、職場での人間関係とプライベートを混同していまうと、その人との関係がうまくいかなくなった時に仕事とプライベートの両方に悪影響が出てしまうことを懸念して、職場の人とは一定の距離を置き、仕事とプライベートをきっちりと分けるようにしているのだそうだ。
確かに「ほぼ強制の飲み会」というのは、日本がまだ派遣社員もいなく、終身雇用制度で年功序列だったころは機能したコミュニケーションの場だったが、そうではなくたってしまった今、「会社の人は家族同然だ」という植え付けはもはや時代遅れなのではないだろうか。
【3】社員旅行
グレイスさんが日本人夫のりょうすけさんから「3日間の社員旅行にいく」と聞いたとき、彼女はなにかのプレゼンや会議、交渉などが目的の旅行だと思ったそうだ。実際は職場のゴルフ旅行で、彼女はとても驚いたという。
会社の人と余暇を過ごすための社員旅行の目的が、グレイスさんには全くわからない。会社の業績が上がって、社員の日頃の働きに会社が感謝の気持ちを伝えるために与える余暇ならば、会社の人との旅行ではなく、社員一人一人に「ハワイ旅行プレゼント」という制度にするべきだと彼女は言う。会社の上司や同僚とのハワイ旅行では、全く「休み」にならないというのが彼女の意見だ。
彼女が言うことが正論だと筆者も思う。社員旅行を心から楽しみにしている人は実は会社の中でも少数派で、ほとんどの人が本当は行きたくないと思っているのではないだろうか。みんな行きたくないと思っているのに、「みんなが行くから自分も行かないわけにはいかない」という状況は、就業時間を過ぎてもなかなか帰れない状況と似ている。
【4】見た目重視
日本はとても見た目重視な国だと言われるが、この日本の特有の価値観を未だにグレイスさんは理解できないという。例えば、就職活動用のスーツ。日本では就職活動用のスーツ、バッグ、靴、ヘアスタイルが決まっているが、欧米ではこのように杓子定規のように決められてはいない。
グレイスさんが日本で就職活動をした時は、旦那さんのお姉さんにスーツを借りた。就職活動用のバッグや靴を買って、いざ面接へ。しかし、後日、「その靴は就職活動向きではないね」と友人(日本人)に言われたそうだ。その会社の面接は残念ながら落ちてしまったそうだが、靴が原因で落とされてしまったのではないかと今でもたまに考えるそうだ。
彼女は日本のテレビ番組で外国人レポーターとして働いたり、演技、声優、フリーランスライタ―として仕事をしているが、どこに行っても初対面の人は必ずグレイスさんの見た目にコメントをするそうだ。彼女がSEO対策のセミナーを開いたときも、「最後に質問はありますか?」と聞いたら、最初に「とてもかわいいですね」とコメントする人が多く、これにも彼女は戸惑いを感じるという。スーツを着て、真面目に仕事をしている女性に対して、「かわいい」と言うのは褒め言葉ではなく、むしろ侮辱であり、馬鹿にされたような気持ちになるそうだ。
【5】サービス残業
以前に比べて少なくなったとされるサービス残業だが、他の先進国と比べてみるとまだまだ日本はサービス残業の多い国なのかもしれない。仕事が終わっても、会社を退社する最初の人になれず、なかなか会社を離れられない…という話はどこにでもあることだ。
グレイスさんの旦那さんも夜遅くまで働き、夜中に帰ってきたときは家にいられる時間がたったの4時間だった日もあるという。彼に帰りが遅くなる理由を尋ねると、仕事を5時までに終わらせることができても、上司が帰宅しないとなかなか帰れないからだと言われた。
このあたりの感覚や集団意識は欧米人にはなかなか理解されないだろう。筆者も日本で働いていたころは残業で帰りが遅くなり、フランス人の旦那と喧嘩になることもあった。しかし、仕事が片付いているのに会社に残らなきゃいけないというのは、本当におかしな話だと思う。
【6】終身雇用と、会社への極端な忠誠心
終身雇用制度はすでに過去のものとなった。少子化、日本経済停滞などにより現在は日本的経営であった終身雇用制度や年功序列賃金制度が廃れているが、日本では長期雇用の慣習が残っており、日本の転職率は欧米の半分以下である。
これは終身雇用制度の時代の価値観が現在でも受け継がれているため、転職がマイナスのものと捉えられていることに起因するのではないだろうか。欧米では転職はキャリアアップや賃上げのイメージがあるのでマイナスイメージではないが、日本の場合は「途中で会社を離れた弱い者、裏切者」のようなイメージがある。
アメリカ人のグレイスさん曰く、単純にお金を稼ぐための手段である会社を「一生付き合うもの」として選ぶのは無理がある。いつリストラや会社が倒産するかもわからない現代で、人生を一生捧げるものとして就職活動をするのは割に合わない。これからは新卒採用の段階から「転職ありき」でキャリアプランを考えるという指導していくべきだ。
おわりに
いずれにせよ、終身雇用が全く機能しなくなっているのにその時代の価値観だけが残っているというのは、労働者にとっては良いことなしで、まさに骨折り損のくたびれもうけ。
毎年春の入社シーズンになると、飲み会や社員旅行に参加しない新入社員や、入社してもすぐ辞めてしまうゆとり世代が話題になるが、ひょっとしたら彼らのほうが時代にあった働き方なのではないかと思うことすらある。給料もボーナスも上がらない、会社の付き合いでプライベートを潰すうえに、転職しにくい、それでも遅くまで働かなくてはいけないというのは、愛情のない異性に貢ぎ続けるようなものだ。
日本人が目指すべき「働き方改革」とは、雇用者と労働者が対等なパートナーとなることを最終目的とした、私たち一人ひとりの会社に対する意識改革から始まるのではないだろうか。
参照:http://howibecametexan.com/2015/07/08/6-thing-i-dont-understand-about-working-in-japan/#prettyPhoto
photo by tokyoform on flickr