ユーロ圏のインフレ率は、2014年12月から4カ月連続でマイナスとなり、昨年5月にプラスに転じたものの、9月に再びマイナスに落ち込んだ。その後は物価の上昇が続き、今年1月にはプラス0.3%となっていたが、2月は原油安でエネルギー価格の下げ幅が前月の5.4%から8%に拡大。工業製品、サービスの上昇率が縮小し、インフレ率はマイナスに転落した。
ECBは物価と景気を押し上げるため、ユーロ圏の国債や資産担保証券(ABS)、担保付き債券(カバードボンド)、EUの機関が発行する債券などを毎月600億ユーロ買い入れる異例の量的金融緩和を15年3月に開始。12月には追加の金融緩和を決め、国債などを買い取る量的緩和の実施期間を17年3月まで6カ月延長したほか、民間金融機関が手元資金をECBに預け入れる際の金利(中銀預金金利)のマイナス幅を0.2%から0.3%に拡大した。
2月の物価下落は、金融緩和の効果が薄く、物価下落圧力が強まっていることが確認された格好となる。ECBが金融政策で重視するエネルギー、食品・アルコール・たばこを除いた基礎インフレ率も前月の1%から0.7%に縮小した。
ECBのドラギ総裁は1月の定例政策理事会後の記者会見で、ユーロ圏経済は中国の景気失速、原油安などによって「下振れリスクが強まっている」として、3月10日に開く次回の理事会で追加金融緩和を検討する意向を表明していた。インフレ率が再びマイナスとなったことで、市場では同理事会で追加緩和が決まるのは確実で、マイナス金利と国債買い取り規模が拡大されるとの見方が広がっている。
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