IWは時間ベースの生産性(以下:生産性)、人件費、および生産性に人件費を加味したユニットレーバーコスト(ULC=生産一単位当たりに要する人件費=)をもとに製造業の競争力を考察した。
それによると、ドイツは生産性で世界8位(2014年)と上位につけており、同国を除く調査対象国の平均を12%上回った。日本に比べると39%も高い。
だが、ドイツは人件費も高く、同国を上回るのはノルウェーなど3カ国にとどまる(人件費のグラフ参照)。このためULCが6番目に高く、調査対象国平均を11%上回っている。ULCが高いことは競争上、不利に働く。
ULCの変動率を時系列でみると、ドイツは1991年から14年にかけて年率0.5%のスピードで上昇した(次ページの表を参照)。一方、調査対象国平均は同0.1%低下。日本は2.3%、米国も1.1%のハイスピードでそれぞれ下落した。生産性の伸びを上回る人件費の上昇がドイツの競争力を相対的に低下させていることが分かる。
ドイツのULCは経済が低調だった99から07年にかけては年率1.9%低下し、競争力の向上につながった。だが、07~14年は経済の回復を受けて同1.8%上昇。この傾向は11年以降、特に強まっている。
IWのミヒャエル・ヒューター所長は「製品市場での競争が世界的に厳しさを増すなかで(人件費の上昇に伴う)さらなるコスト上昇分を価格、ひいては消費者に転嫁することはできない」と指摘。今後は賃上げを小幅に抑制するよう呼びかけた。
大幅な賃上げを続けると、国内の雇用の喪失と個人消費の低迷につながり、独景気を低迷させるというのがIWの見方だ。独製造業は他のユーロ加盟国から部品を大量調達していることから、ドイツの景気低迷は最終的にユーロ圏の経済にとっても有害だとしている。
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