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パナソニック、シンガポールで植物工場事業立ち上げへ

 
所得水準の高まりとともに中間層が増加、食の安全に対する意識が高まっている。国土が狭く、食料自給率が低いという課題を抱える同国を起点に食物工場がアジアに広がりつつある。
 
昨年11月にパナソニックの新商品がシンガポールのスーパーに並んだ。家電売場ではなく、世界各国の野菜が並ぶ生鮮食品コーナーだ。レタスや水菜、パプリカを詰めたパッケージには「Panasonic」の文字が目を引く。価格は6.9シンガポールドル(約560円)とマレーシア産サラダの約2倍だが、一部で売り切れるなど、出足は好調のようだ。
 
工場野菜が売れるのは、安心、安全への意識が高まっているからだ。シンガポールの野菜自給率は1割ほどで、野菜の輸入額はこの10年でほぼ倍増した。割高でも厳重に管理されて生産される工場産野菜に人気が集まる。
 
商機を見込んで技術力で先行する日本勢が相次ぎ進出。福井県に植物工場を持つスーパーの木田屋商店は昨年8月に試験販売を始め、野菜5パックを販売。空調設備大手の大気社などと組み、来年にも隣国マレーシアで生産を始め、輸入する計画だ。また、住友化学はシンガポール農食品獣医庁との共同研究でビル屋上で野菜を生産するノウハウの確率を目指す。
 
「食物工場」事業の成長が見込めるのはシンガポールにとどまらない。ベトナムのホーチミン市郊外のロンハウ工業団地では自動車部品のタナベが3億円を投じ、野菜工場を建設した。リーフレタスなどの無農薬野菜を1日1700株生産でき、昨年10月に高級ホテルなど向けに出荷を始めた。
 
東南アジアを中心とした中間層の増加は、食品に対する思考にも変化を与えた。シンガポールを足がかりに、海外展開のノウハウをいかに構築できるかがガキとなりそうだ。
 
photo by seeweb on flickr