中国の代表的な株式指標であるCSI300は今年最初の取引となった4日、約7%安と大幅に下落した。同日発表された2015年12月の製造業購買担当者景気指数(PMI)が前月の48.6から48.2へと大きく下落したことが引金となった。同指数は判断の節目となる50を10カ月連続で割り込んでおり、中国の景気がこれまでの予想以上に冷え込んでいることがうかがわれる。
中国ではCSIの変動幅が前営業日比で7%を超えるとその日の株取引が全面停止される「サーキットブレーカー」制度が4日に導入されたばかり。同制度がなければ、下落幅はさらに大きくなっていた可能性が高い。
中国株不調の情報を受けて、同日の株価は世界的に低下。独最大手30社を対象とするDAX(ドイツ株価指数)は昨年末の1万743から1万283へと4.3%下落した。DAXは昨年1年間で9.6%上昇したが、わずか1日でその4割以上が吹き飛んだ格好だ。
ドイツ経済はこれまで、中国経済の急速な拡大を追い風に堅調な成長を続けてきた。自動車大手のフォルクスワーゲンがトヨタや米ゼネラル・モーターズに並ぶ自動車業界の最大手グループに浮上できたのは中国市場に強力な地盤を持っていたためだ。その中国の景気が構造的に低迷していることはドイツ経済に影を落とす。
<イラン復興の遅れを経済界が懸念>
中東の2大大国であるサウジとイランはもともと険悪な関係にある。サウジがイスラム教の最大宗派であるスンニ派の盟主を任じるのに対し、イランは敵対宗派シーア派の本山であるためで、内戦が続くシリアではイランがアサド政権、サウジが反体制派をそれぞれ支援。イエメンでも両国の代理戦争が繰り広げられている。
そうした緊迫した情勢のなかサウジは2日、シーア派の有力な宗教指導者ニムル氏を含む47人の死刑を執行。両国の関係は一段と悪化した。3日にはテヘランのサウジ大使館を群衆が襲撃・放火し、4日にはサウジがイランとの外交・貿易関係を停止している。
両国とドイツの貿易取引は現在、それほど大きくない。14年のサウジ向け輸出高は約89億ユーロで、国別ランキングは26位。イランは約24億ユーロで50位にとどまる。ドイツは石油の大半をロシアやノルウェー、英国から輸入しており、資源の中東依存度も低い。
それにもかかわらず、サウジとイランの関係悪化は大きな懸念材料となっている。ドイツは人口が多く資源も豊かな両国との経済関係を大幅に強化しようとしているためだ。イランの人口は7,800万人、サウジは同3,100万人に上る。サウジは石油収入により潤沢な資金を持っており、ガブリエル経済相は昨年、経済界の要人を引き連れて同国を訪問した。
イランは核開発に伴う欧米の制裁で経済が低迷しているものの、米英仏露中独の6カ国は昨夏、制裁を段階的に解除していくことで合意しており、順調にいけば今年から解除が始まる見通し。同国は長年の制裁で石油関連の施設などインフラが老朽化しており、特に機械・設備、建設などで大きな需要が見込まれる。独企業は現地事業のスタートに向けて制裁解除を待っている状態だ。
だが、イランが復興すると中東地域で影響力をこれまで以上に強めていくと予想されることから、サウジは石油需要の世界的な減少にもかかわらず減産せずに価格を下落させ、イランの石油収入を目減りさせる戦略をとっている。
両国間の緊張が今後さらに高まると、イラン復興の道筋は大きくずれ込む可能性がある。独商工会議所連合会(DIHK)はドイツの対イラン輸出高が今後3年で約50億ユーロに倍増し、5~7年後には100億ユーロに拡大するとしていたが、DIHKのトライアー貿易部長はサウジ・イラン関係の悪化で「見通しが悪くなった」との見方を示した。
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