カンボジア、労働組合法案になおも深刻な課題
国際労働組合総連合(ITUC)は、労働組合法の最新の法案について「深刻な懸念」を示しており、政府が労働者の利益のために織り込んだ重要な譲歩内容にもかかわらず、そのまま承認された場合は、“断固”それに反対すると明言している。
労働組合法の最新法案は、労働組合を新設し、運営することに関する新ルールを設定しようとしており、先月閣僚会議にて承認された後国会に提出され、2014年半ば以降で初めて国会審議まで到達した完全版の法案となった。
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この法律はほとんどの産業の経営者に適用されるものの、約70万人の従業員を擁し、カンボジアの輸出の80%を占め、昨年58億米ドルもの売上高を上げた衣料品産業に特に焦点が当てられている。しかし、衣料品産業の経営者と多くの労働組合は、長い間緊張関係にあった。
「ITUCは、提出された(労働組合)法の内容について、深く懸念しています」今週入手されたレポートにおいて、ITUCは新しい法案をくまなく精査した上で、このように述べている。「我々が示していた課題のいくつかは対処されているように見えますが、まだ多くの深刻な問題が残っています。これらの問題は、この法案が議会に提出される前に、または立法プロセスの期間内に対処されなければなりませんでした。さもなければ、ITUCは断固、法案に反対するほかありません」とこのレポートでは述べられている。ITUCの世界の関連団体には、約17万人の労働者を擁する3つの地域組合連合がある。
労働省は7月、前の法案に対する労働者権利団体からの激しい批判に直面し、急遽労働組合を結成するためのしきい値要件を、企業の全従業員の20%(以上の参加)から、わずか10人に緩和した。その他にも、労働組合に排他的交渉権を与える“代表権”を獲得するための要件も、全従業員の50%から30%へ引き下げるなど、いくつかの譲歩がなされた。
しかしITUCは、今回の法案はなおも政府が批准している国際労働機関の求める基準に達していない、とした。組合内部でのリーダーシップを誰がとるのか、に関する条件を規定した条項は完全に廃止されるべきだ、とこのレポートでは指摘している。現在の条項では、過去に犯罪歴のある人物は、リーダー、マネージャーや管理者の役割を担うことを一切禁じている。ITUCは、詐欺や横領など、その者の品位が疑われるような犯罪の場合にのみ、制限されるべきである、としている。
「カンボジアの司法制度の下でいかなる有罪判決を受けた者も組合の公職の選出から排除するこの条文は悪用される可能性があり、経営者やその他当局は簡単に労働組合の現職、または候補者に、“政治的な”性質の罪も含めて何らかの理由により刑罰または科料を課し、それらの人物を労働組合活動から排除することが可能となります」と指摘している。
ITUCはまた、不当労働行為の条項における工場門の閉鎖や政治的な扇動行為に関するあまりにも曖昧な言葉の定義は、労働組合をトラブルに巻き込むのに容易に悪用される可能性がある、との懸念を示している。「純粋な政治的目的での扇動禁止条項は、政府の政策を変更させるための組合活動を禁止することを想起させます」とレポートは指摘している。「確かに政府や経営者は、過去にもまさにこのようなことを行ってきました」
この労働組合法に違反した場合の罰金は1250米ドルまで増額されたが、その金額は小さな労働組合を“たたきつぶす”可能性があるが、一方で経営者側からは、ビジネスを遂行する上でのコストとして容易に吸収することができる。
また、政府が1997年以来設置することが義務付けされている労働裁判所がまだ存在しない中で、労働組合法の基づく争議は通常の司法裁判所ではなく、“カンボジアで唯一の、独立・有効な司法裁定機関”である仲裁裁判所へ送ることを(このレポートでは)提案している。
ITUCはまた、これら労働組合を解散させるためのルールは、組合員の大多数により法廷に持ち込ませるのではなく、各組合の定款または細則に委ねられるべきとし、さらに個々の指導者の違反行為のために、労働組合自体が処罰されるべきではない、との意見を示した。
カンボジア縫製業協会(GMAC)のKen Loo会長は木曜日に、彼の組織ではまだ法案を見ていない、と述べた。先月彼は、GMACにとっての二つの大きな懸念点として、政府であっても、裁判所の事前の認可がなければ不適切な活動をする労働組合に対していかなる制裁措置も取ることができず、かつそのプロセスに時間がかかりすぎること、また、労働組合を結成するために必要とされる従業員数のしきい値要件が低いことを挙げた。
GMACの衣料品産業労働組合に対する主な不満の一つとして、今も有効な団体交渉権を持っている労働組合があまりに多くあることが挙げられるが、その上たった10人で労働組合を結成することを可能にすれば、この問題を悪化させるだけであろう。
国民議会におけるカンボジア人民党(CPP)が多数を占める立法委員会では、火曜日に法案に関するワークショップを開催する予定としている。労働委員会のメンバーである野党のKe Sovannaroth議員は、カンボジア救国党(CNRP)としては、CPPと政治的に断絶関係にあり、このワークショップに参加するかどうかをまだ決定していない、と述べた。
ITUC同様彼女は、新しい法案に規定されている既存の裁判所の利用を含む、多くの条項に反対している。「第98条は裁判制度についてのものであり、政府は労働裁判所を新設するとしています。ですが、労働裁判所が新設されるまでは、既存の裁判所を利用し続けることになるでしょう」と彼女は述べた。「我々がみな知っているように、既存の裁判所は今まで、従業員、衣服労働者や労働組合が表現の自由を制限するのに利用されてきたのです」
photo by hiyori13 on flickr
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