新華社は11月3日、第13次5カ年計画の草案全文を発表した。香港については「1国2制度、港人治港、高度な自治の貫徹。中国本土と香港・マカオの協力・発展を深化させ、国家経済の発展と対外開放の中での香港・マカオの地位と機能を向上、香港・マカオの経済発展、民生改善、民主化推進、調和促進を支援する」「香港の国際金融センター、海運センター、貿易センターとしての地位を強固にし、国家の双方向開放、『一帯一路』建設への参入を支援。人民元オフショア業務のハブとしての地位強化、資金調達、貿易、物流、専門サービスなど高付加価値方向への発展推進を支援する」「本土の香港・マカオへの開放を拡大し、前海、南沙、横琴など広東省・香港・マカオの協力プラットホームの建設加速。汎珠江デルタなど地域協力を深化」などが盛り込まれた。
国家発展改革委員会の徐紹史・主任は記者会見で、特に「一帯一路」戦略では香港が持つ人材、資金調達などの優位性を発揮し、本土企業と協力することにより海外市場のさらなる開拓が可能になると指摘。来年の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で採択される計画要綱ではさらに香港に関する内容が増え、前回に続き独立した章が設けられるとみられている。
曽俊華(ジョン・ツァン)財政長官は11月1、8日と立て続けに公式ブログで第13次5カ年計画に言及した。曽長官は草案で最も重要な情報は「イノベーション」とみる。イノベーションは5つの発展理念の筆頭に挙げられ、単なる政治スローガンではなく現実的な意義を持つと指摘。特に財界関係者などは計画への理解を深め、国家の発展の方向性を把握して商機を模索するよう呼び掛けたほか、「香港は国家経済と対外開放で重要な役割を担う」として人民元国際化を例に挙げた。
曽長官は先に若手企業家らと深圳市前海を視察したことに触れ、5カ年計画草案が前海などの広東省自由貿易区と香港の協力強化に言及していることを紹介。国家経済が高付加価値に向けて発展を始める中、サービス業が域内総生産(GDP)の90%以上を占める香港にとって大きな発展のチャンスがあるとの見方を示した。特に若い企業家に対して「父親の代と同様に国家経済改革の過程で役割を見つけ、国家の今後5年のイノベーションの新しい波に乗るべき」と述べた。
特区政府は香港の経済成長を維持するため5カ年計画への呼応に躍起だ。立法会で10月29日、国家戦略の「一帯一路」によるチャンスを生かすことを特区政府に求める議案が通過した。同議案には親政府派議員のほか民主派の民主党と公民党も賛成。ただし「特区政府が『一帯一路』を推進するのは政治任務」と形容していた工党の李卓人・主席や人民力量などは反対票を投じた。
11月6日には立法会財務委員会で特区政府が提出した創新及科技局の予算申請が可決されたが、これも5カ年計画のイノベーションに沿ったものだ。創新及科技局は20日に正式に設置されることが決まり、行政会議メンバーで創新及科技顧問の楊偉雄氏が局長に就任するとみられている。創新及科技局の設置はもともと梁振英・行政長官の就任時に頓挫した政府機構改革に含まれ、昨年の施政報告(施政方針演説)にあらためて盛り込んだもの。一部の民主派議員による議事妨害で新設が阻まれたが、約3年を経てようやく実現にこぎ着けた。梁長官は可決を受け、「創新及科技局の設置は香港の競争力を引き上げるために重要。香港はライバルに遅れを取り続けていてはならない」とコメントした。
<今年の輸出はゼロ成長>
世界銀行が10月末に発表した2016年ビジネス環境ランキングで、香港は前回の3位から後退し、5位となった。1位は10年連続でシンガポール、2位はニュージーランド、3位はデンマーク、4位は韓国となっている。このランキングは189カ国・地域を対象に、起業、不動産登記、納税、貿易、融資など10指標でビジネスの利便性を評価したもの。香港は一般投資家の保護で1位、起業で4位、納税項目で4位だが、貿易では47位、財産登記では59位と低く、不動産市場の過熱抑制策で印紙税を強化したことなどが財産登記の評価にマイナスとなった。
従来、香港経済を支えてきた貿易の低迷は著しい。特区政府統計処が発表した貿易統計によると、9月の輸出総額は前年同月比4・6%減の3167億ドルで、5カ月連続の減少。香港港口発展局が発表した港湾統計では、9月のコンテナ取扱量は前年同月比6・7%減の167万4000TEU(20フィート標準コンテナ換算)。14年7月から15カ月連続の下落となり、通年では寧波に抜かれ世界5位に後退するともみられている。
10月に「アジア物流・海運会議」の記者会見に出席した海運大手、東方海外の董建成・会長は「08年の金融危機以来、海運業は世界的に低迷が続いているが、香港のコンテナ取扱量の減少傾向は年内に底を打つ」との見通しを示した。ただし問題は今後いかに競争力を高めるかで、10号コンテナターミナル建設の必要性などに言及している。
香港貿易発展局(HKTDC)が9月に発表した第3四半期の輸出指数は37・1で、第2四半期の46・8から9・7ポイントの急落。2期連続の上昇から下落に転じ、12年第4四半期以降で最低となった。HKTDCの関家明・研究総監は「中国政府が景気刺激策を打ち出したものの経済成長は鈍化が続いている。人民元切り下げも他の東南アジア通貨に比べ小幅であるため、香港の輸出への効果は限定的」と述べ、香港の今年通年の輸出総額は年初に予測した3%の伸び率を達成するのは難しいとみて、ゼロ成長に下方修正した。
貿易動向のバロメーターである中国進出口商品交易会(広州交易会)が11月4日に閉幕し、成約高と来場者数は5回連続の減少となった。今回の輸出成約高は1712億4900万元で、前年同期比7・4%減。海外からの来場者数は17万7544人で、同4・6%減。主要地域のうち欧州が同10・29%減と大幅に減少したほか、アジアも同1・67%減、「一帯一路」沿線国家も同5・85%減だった。ただし「一帯一路」沿線にある南アジア地域協力連合は同15%増。来場者の割合では「一帯一路」沿線国家が40%を占めるなど、同市場とのかかわりが今後の成長を左右することは間違いなさそうだ。