NOx不正操作の発覚を受けてVWが開始した内部調査で燃費とCO2の不正が明らかになった。実際の燃費が型式認定を受けた際のデータよりも悪いため、CO2排出量も多い。該当車両は合わせて約80万台。主にディーゼル車が占めるものの、ガソリン車も9万8,000台が該当する。同社はこの問題で発生するコストを20億ユーロと見積もっている。
『フランクフルター・アルゲマイネ』紙によると、VWが低燃費・低CO2排出量を売り物にしてきた「ブルーモーション」技術の採用モデルが主に該当。コンパクトカー「ゴルフ」のブルーモーションモデルでは走行1キロメートル当たりのCO2排出量が100グラムを超え、同社が提示してきた同90グラムを大幅に上回っている。モデルによっては実際の数値が型式認定の書類上の数値を18%上回るとの報道もある。
CO2不正の背景には欧州連合(EU)の排ガス規制強化がある。EUは地球温暖化防止策の一環として乗用車のCO2排出削減に取り組んでおり、各メーカーは2015年までに新車のCO2排出量を平均130グラム以下に抑えることを義務づけられている。同許容上限値は21年から平均95グラムに引き下げられることから、各社は巨額の資金を研究・開発に投資。同規制を順守できず制裁金を科される事態の回避を目指している。
ベルギッシュ・グラートバッハ経済専門大学(FHDW)付属自動車研究センター(CAM)のデータをもとに『ヴェルト』紙が報じたところによると、VWブランド乗用車の09年のCO2排出量は平均155.7グラムに上った。これはフィアット、プジョー、フォード、オペルなどの競合を上回る水準で、CAMが調査対象とした量販車9ブランドの平均(154.2グラム)よりも高かった(最低はトヨタ/レクサスの130.6グラム)。
だが、VW車のCO2排出量は10年以降、他のブランドを上回るスピードで減少。14年には130.2グラムとなり、9ブランド平均(132.8グラム)を下回った(トヨタ/レクサスは最低の117.4グラム)。
<排出30%削減命令に逆らえず>
日曜版『ビルト』紙によると、VW車のCO2不正は13年に始まり15年春まで行われていた(12年以前に不正が行われていた具体的な容疑は現時点でないものの、CAMの調査結果はその可能性を排除できないことを示唆している)。きっかけとなったのは15年までにCO2排出量を30%引き下げるとしたヴィンターコルン社長(当時)の12年の発言だ。この目標は違法な手段を用いない限り実現できないため、同社の技術者は不正を働いた。
具体的には◇タイヤの空気圧を3.5気圧以上と高く設定する◇エンジンオイルに軽油を混入する――という手法で測定値を不当に押し下げていた。VWには上意下達の企業文化が深く根を張っており、技術者は「CO2目標は実現不能」と反論できなかったもようだ。
今回のCO2不正では型式認定のあり方にも問題があることが明らかになった。型式認定は当局(ドイツでは連邦陸運局)が行うものの、それに必要な検査は当局の指定を受けたテュフジュドやデクラなどの技術監査サービス会社が自動車メーカーの委託を受けて行っている。技術監査事業者は厳しい検査を行うと顧客メーカーから検査を受注できなくなる恐れがあるため、車両の性能チェックは甘めになる。
事態を深刻視した欧州委員会のビェンコフスカ委員(域内市場・産業担当)は加盟国の型式認定作業に対する監視体制を強化する意向を表明した。
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