フォルクスワーゲンがコスト削減強化へ、不正問題の影響考慮
自動車大手フォルクスワーゲン(VW)のマティアス・ミュラー新社長は6日、ヴォルフスブルク本社の臨時従業員集会で演説し、コスト削減の強化方針を明らかにした。ディーゼル車の排ガス不正発覚を受けて、リコール(無料の回収・修理)や罰金・損害賠償の支払いが避けられなくなっているためだ。しわ寄せはグループ企業や従業員のほか、サプライヤーにも及ぶとみられる。
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ミュラー社長は演説のなかで、不正ソフトが搭載されていた車両の修理方法を近日中に独陸運局(KBA)に伝え承認を得る見通しを明らかにした。修理の内容は車両によって異なり、ソフトの交換で済むものと、部品レベルの処置が必要なものがあるとしており、修理については解決のメドが立ったもようだ。
一方、不正問題が事業と財務に及ぼす影響は「依然として見通せない」と指摘。コスト削減を強化する考えを明らかにした。事業効率プログラムを厳くなった状況に合わせて修正するほか、投資計画を全面的に見直し、緊急性のない投資は中止ないし先送りする。VWは昨年11月、2015~19年の5年間にグループ全体で856億ユーロを投資すると発表したが、規模を縮小することになる。
同社は昨年秋、収益力が低いVWブランドで17年までにコストを50億ユーロ圧縮する計画を打ち出した。排ガス不正問題を受けて、今後はグループ全体でコスト削減に取り組んでいく。同社長は雇用を維持したいと強調したものの、「痛みは避けられない」とも述べており、従業員にしわ寄せが及ぶ可能性を排除していない。
独『ヴェルト』紙によると、リコールの費用は1台当たり100~200ユーロで、合わせて数億ユーロにとどまる見通し。ただ、修理の結果、出力が低下するなどの問題が出、顧客から出力を本来のレベルに保つよう要求されると、その修理費用は1台当たり1,000ユーロとなり、総額は最大110億ユーロに達する。
また、米国の制裁金は二酸化窒素(NOx)排出量の不正で最大180億ドル、不正ソフトの利用で同20億ドルに上る見通し。このほか、顧客と株主の損害賠償費用も莫大な規模に達する恐れがあり、バーデン・ヴュルテンベルク州立銀行のアナリストは同不正問題で発生するコストを470億ユーロと試算している。VWには現在およそ260億ユーロの巨額な手元資金があるものの、足りない恐れがある。
不足部をねん出するため、同社は増資や一部ブランドの売却に踏み切る可能性もある。
サプライヤーに対しては値下げ圧力を強めていくとみられる。VWの販売台数が落ち込めばサプライヤーは売上も減少することから、ダブルパンチを受けそうだ。
photo by AndreasPraefcke
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