不正発覚を受けて、VWは素早く経営陣を刷新し、近く販売済みの車の回収に踏み切る。不正のあったディーゼル車は欧州市場に多く、ドイツだけでも少なくとも280万台が点検対象となり、費用負担は重い。さらに、規制当局からの罰金や、投資家への損害賠償もかさむほか、ブランドイメージの悪化で新車販売も鈍りそうだ。それでも、財務体質が健全なVWはかなりの負担を吸収できるとみられる。生産量を減らす際は時短勤務などをフル活用し、人員削減は出来る限り避けるであろう。
しかし今回のVWの事件を受けて、ドイツ国内では雇用に対する不安が広がっている。「VW本体だけでなく、取引先の部品メーカーの雇用も脅かされる」とドイツ経済研究所のフラッツシャー
所長は語る。ドイツの自動車産業は年率2〜3%のペースで就業者を増やしてきた。1年間で2万人弱の新規雇用を産んでいる計算になる。欧州最大手のVWが失速し、大きな雇用を創出してきた動きが弱まれば、内需も鈍り、欧州の景気に影響を与えると考えられる。
ドイツ経済に依存する周辺国も無関心ではいられない。隣国ポーランドでは、メディアが連日、今回の事件を詳細に報道。ピエホチンスキ副首相兼経済相は「VWに説明を求めたい」と地元メディアで訴えた。VWはポーランドだけでも1万人を雇用している。