ドラギ総裁の発言は、中国など新興国の景気減速が世界経済を圧迫し、ユーロ圏の輸出に悪影響を及ぼしているほか、原油安で消費者物価が上がりにくい状況が続いていることを受けたもの。ECBは同日発表した最新の内部経済予測で、ユーロ圏の2015年の域内総生産(GDP)予想伸び率を6月の1.5%から1.4%に下方修正し、予想インフレ率も0.3%から0.1%に引き下げた。
ECBが3月に本格化させた量的緩和では、ユーロ圏の国債や資産担保証券(ABS)、担保付き債券(カバードボンド)、EUの機関が発行する債券などを毎月600億ユーロ買い入れるというもの。ユーロ圏のインフレ率を2%前後まで引き上げるのが目的で、16年9月まで続ける。予定通り進めた場合の買い取り総額は1兆1,000億ユーロに達する。
ドラギ総裁は理事会後の記者会見で、「ユーロ圏経済は緩やかな回復を続ける見込みだが、新興市場の経済減速で回復のペースは当初の予想より鈍くなる」と指摘。現行の量的緩和の買い取り規模は維持しながらも、特定の債券の買い取り上限を現在の25%から33%に引き上げることを明らかにした。さらに、状況に応じて「あらゆる措置を講じる用意がある」とした上で、量的緩和の「規模、(買い取り資産の)構成、プログラムの(実施)期間について、十分な柔軟性を持たせる」と述べ、国債などの買い取り規模拡大や実施期間の延長に応じる姿勢を示した。
この発言を受けて、同日にユーロとユーロ圏の長期国債の利回りは下落し、欧州の株価は上昇した。
一方、同日の理事会では、ユーロ圏に適用される最重要政策金利を史上最低となる現行の0.05%に据え置くことを決めた。