すでに暫定政権は、新警察法案を承認済で、2016年5月から実施するという。「警察官の徴兵?」と思う人もいるだろうが、タイでは数十年前にも警察官の人員不足を理由に、徴兵制度によって埋め合わせていたことがある。
今回も理由は一緒。タイ国家警察庁のソムヨット長官は「現状、国民800人に対して警官1人という割合。これでは、犯罪行為に対応できず、国民を守れない」と話す。
徴兵(徴集)要件は、軍隊とほぼ同じ。対象は21歳以上の男子で、2年間の警官勤務=労働が課せられる。軍隊と違う点は、自ら志願できず、くじ引きのみで選ばれる。職務内容は、正規警官のサポート業務で、その間の給料は月収9000バーツ。2年間の職務まっとう後は、そのまま職業警官(約1割)として採用される場合もあるが、そのほかは予備警官として有事の際の要員となる。どうしても警察業務に携わりたければ“警察ボランティア”としてお手伝いはできる。従来通り、職業(正規)警察官になりたい方は、公務員採用試験を受験しなければならない。
新法案には、慎重論もある。急先鋒と言われるのが民主党のワチャラ氏で、「現状の警官は、4年間も勉強していながら有能とは思えない仕事ぶりが目立つ。そんな彼らに管理はできない」と現警察機構そのものを批判。その上で、今回の法改正について、「戦争以外での労働力の徴集は憲法違反。素人警官に権限を与えるのはリスクだ。なにより、警察庁の役人はタクシン元首相派が多く、心配事が増えるだけ」と持論を展開する。
スワパン首相府相は3日、「新警察法は、改めて、徴集する警官の権限や義務を再度検討する」とコメント。本当に実施されるかは不透明だ。