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近代冷戦の板挟み〜ウイグル族を中国へ強制送還

 
2014年3月、ソンクラー県の国境でウイグル族341人がタイに不法入国。トルコ系180人がトルコに送られ、52人が拘留、残り中華系109人が中国に強制送還された。
 
ウイグル族が中国当局から弾圧を受けているのは報道されている通り。中国では「ウイグル族はイスラム教徒のテロリスト」とされ、圧政を強いられてきた。1949年、新疆ウイグル自治区は95%をウイグル族が占めていたが、現在では45%まで落ち込み、漢民族が40%と拮抗。漢民族は、イスラム教徒の女性のヒジャブ(被り物)や男性のあごひげを禁止するなど、衝突もしばしば起きている。そのため多くのウイグル族は、同じイスラム教徒が大半を占めるトルコに救いを求め、同自治区を去っていった。
 
今回のタイの対応について、米外務省のジョン・カービー報道官は「難民が望むところに行く権利は国際法律上、誰でも知っていること。しかし、タイは難民を中国に追い返した。これは認められない」とタイ政府を非難し、トルコ政府もタイを批判する声明を出した。一方、中国は「タイは正しい。なかには難民ではなく、テロリストもいた。送り返すのが当然。タイへの非難はおかしい」と擁護。プラユット暫定首相は「タイは国際法に従って対応した。犯罪者が罰を受けるのは当然。我々は悪いことをしたわけではないのに、なぜ非難されないといけないのか」と各国の反応に疑問を呈した。とはいえ、中国寄りのイメージを否定するかのように「送還したウイグル族の安否を確認するため、中国に調査団を派遣する」と中立的なスタンスを採ってみせた。
 
タイ地元紙バンコクビズは、アメリカと中国という大国の睨み合いを「近代冷戦」と題し、板挟みとなっているタイのバツの悪さを報じた。今後2国間で起きるとされている経済、テクノロジー、エネルギー、イデオロギーなどの争い……。地政学的にもタイがASEANのハブになることは間違いないが、その代償は決して小さくはない。