中国企業初の独銀買収、名門H&Aが復星国際の傘下に
中国の複合企業・復星国際は8日、ドイツの老舗プライベートバンク、ハウク・ウント・アウフホイザー(H&A)の株式80%強を複数の株主から取得することで合意したと発表した。残り20%弱の取得も目指しており、全株を獲得すると買収金額は2億1,000万ユーロに達する。ドイツの銀行を中国企業が買収するのは今回が初めて。復星国際はH&Aを欧州事業拡大の橋頭保として利用する考えだ。取引の成立には独金融監督庁(BaFin)など当局の承認が必要。
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H&Aはフランクフルトを拠点とする1796年創業のゲオルク・ハウク・ウント・ゾーンと、ミュンヘンを拠点とする1870年創業のH.アウフホイザーが1998年に合併して設立した名門銀行。総資産は28億ユーロで、ベーレンブルク、メッツラー、M.M.ヴァールブルクに次ぐ独プライベートバンク4位に付ける。株式合資会社(KGaA)の形態をとっており、株主には太陽電池大手ソーラーワールドのオーナーであるアスベック家や、菓子大手ハリボのオーナー一族リーゲル家といった事業家・資産家が名を連ねている。過半数の株主が属するH&Aの株主委員会は今回、復星国際の買収提案を受け入れるとともに、同委に属さない株主に対し提案受け入れを促した。
復星国際は92年、学生4人が4,000ドルで設立した企業で、2007年に香港市場で新規株式公開(IPO)を果たした。昨年は欧州企業への出資に計180億ドルを投じている。
投資対象は急成長する中国の中間層のニーズを踏まえて選定している。具体的にはライフスタイル、レジャーに焦点を置いており、13年には仏リゾート施設運営会社クラブ・メディテラネを仏アクサ・プライベート・エクイティと共同買収した(表を参照)。独アパレル大手トム・テイラー(出資比率23.16%)や英旅行大手トーマス・クック(同5%)の株式を取得したのもこの戦略に沿った措置で、両社の中国市場開拓を支援する考えだ。トーマス・クックとは中国に合弁会社を設立した。
<H&Aとの合意形成を重視>
買収・出資資金を得るために金融関連企業の買収も積極的に推し進めており、昨年にはポルトガル保険最大手のカイシャ・セグロスを傘下に収めた。トーマス・クック株5%はポルトガルの保険子会社フィデリダーデを通して取得した。
復星国際は14年、米投資大手リップルウッド・ホールディングス傘下のRHJIなどと共同で独銀BHFバンクを買収したものの、経営方針をめぐりRHJIとの関係が悪化。出資比率が19.2%にとどまる復星国際は苦い思いをした。
このためH&Aの買収交渉では80%以上の株式獲得を条件に設定。他の株主が反対しても重要な経営方針を貫徹できるようにした。
中国企業による買収に対してはノウハウ吸収後にドイツ拠点を閉鎖するとの警戒感が強いものの、復星国際はH&Aサイドの支持を受けているもようだ。H&Aのヴォルフガング・デムル監査役会長は『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に、株主、経営陣、従業員、事業所委員会が今回の買収に賛成していると明言した。復星国際の経営陣は意志疎通を積極的に図り、合意形成を重視しているという。
H&Aは復星国際の傘下に入ることで事業の国際化とデジタル化を推し進める考えだ。特に巨大市場である中国への進出に意欲を示している。
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