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乗用車高速料金の導入を延期、欧州委の違反調査手続き受け

Pkwマウトは道路インフラ整備財源を強化する目的で導入されるもので、ヴィネット方式で徴収される。ヴィネットは料金前払いの道路利用券で、料金は排気量(100ccが課金単位)と排ガス性能(「ユーロ5」「ユーロ6」などと表記される欧州排ガス規制に基づく)および燃料の種類に基づいて課金される。

料金は年22~130ユーロ(電気自動車やオートバイは免除)。国内で登録されている車両については料金が税金(車両にかかるインフラ税)で全額相殺されるため、新たな負担が生じない。

国外車両については1年間有効なヴィネットのほか、有効期間が10日ないし2カ月の短期ヴィネットも販売する。短期ヴィネットの料金も排気量や排ガス性能に応じて異なり、10日もので5ユーロ、10ユーロ、15ユーロの3種類を設定。2カ月ものでも16ユーロ、22ユーロ、30ユーロの3種類がある。

Pkwマウト導入に向けた法案は8日に成立した。大統領の署名を経て11日の官報に掲載されたため、欧州委は法的手続きを開始した。

同委は◇ドイツ国内で登録された車両はヴィネットが税金で全額相殺される◇短期ヴィネット料金が有効期間の短さに釣り合わない高い水準に設定されている――の2点が他の加盟国の市民に対する間接的な差別に当たると批判。違反調査手続きの第一段階としてドイツ政府に「正式通知書簡(Letters of Formal Notice)」を送付した。

政府は2カ月以内に回答しなければならない。欧州委の要求を受け入れる形で法改正を行わなければ、欧州司法裁判所(ECJ)に提訴されることになる。

<道路財源の穴は6億ユーロ以上に>

ドブリント交通相は連邦議会で、PkwマウトはEU法に抵触しないと述べ、欧州委の法改正要求に応じない考えを示した。最終的な判断はECJが下すことになるとしており、欧州委がドイツを提訴するのは確実とみられる。

同交通相はECJのゴーサインが出るまで料金徴収を見合わせる考え。来年1月にPkwマウト導入を強行すると、ECJで敗訴した場合に大きな痛手を受けるためだ。

政府はPkwマウトの料金徴収業務を、入札を通して民間事業者に委託する方針を打ち出している。ECJが仮にPkwマウトを違法とする判決を下すと、ドイツは料金収入を返済しなければならなくなるうえ、料金徴収事業者から損賠訴訟を起こされる恐れもある。

政府はPkwマウトの導入により道路財源を16年から年6億ユーロ以上、拡大する計画だった。少なくともECJ判決が出るまではこの分が入らないことになる。

欧州委は高速道路の利用料金負担で加盟国が国内居住者をある程度、優遇することは容認しており、ヴィネット料金の通勤税控除を認めるオーストリアに対してはEU法違反調査手続きを行っていない。ただ、ドイツが導入を決めた税金によるPkwマウトの全額相殺ルールは他の加盟国市民に対する明確な差別に当たり許容できないという立場だ。

欧州委は将来的に、EU域内全域の高速料金を走行距離に応じて徴収する方式に統一したいとの考えを表明している。受益者負担原則に最も合致し外国人ドライバーに不利になることがないと判断しているためだ。